家族などによる介護の負担、終末期には倍増


米国介護連盟および全米退職者協会(AARP)が実施した2015年の調査によると、過去12カ月以内に50歳以上の高齢者に対して無償の介護を提供した米国民は3400万人を超え、その多くは女性だった。一方、終末期の介護に家族などの無償の介護者がどの程度関わっているのかについては、これまで定量化されたことがなかった。
そこでOrnstein氏らは今回、65歳以上の高齢者およびその介護者に対して実施された調査データを用い、終末期にある高齢者と終末期ではない高齢者との間で、ケアを担う介護者の数や、介護に費やされている時間などを比較した。「終末期」は調査から12カ月以内に高齢者が死亡した場合と定義した。
その結果、終末期の高齢者を介護する介護者数は平均2.5人で、週当たりの介護時間は61.3時間だった。これに対し、終末期ではない高齢者では週当たりの介護時間は35.5時間だった。
また、「介護で身体的な困難がある」と回答した介護者の割合は、終末期を迎えた高齢者の介護者では35%を占めていたが、終末期以外の高齢者の介護者では21%にとどまっていた。「自分のための時間がない」と回答した介護者の割合も、前者では51%に上っていたが、後者では21%だった。
なお、介護者の約9割が報酬のない無償の介護者だったが、介護者が配偶者である場合、ほぼ3分の2は他の家族や友人などによる支援を受けずに介護を担っていたことも分かった。
患者の権利や終末期の問題などの擁護活動を行っている団体であるCompassion & Choices代表のBarbara Coombs Lee氏は、今回の調査対象となった介護者が、必ずしも介護をしている高齢者が終末期にあることを認識していなかった可能性があることを指摘。死期が近いことを認識していないと、無益かつ大きな苦痛を伴う治療を選択することにつながりやすく、それによって介護者の負担が増大してしまう場合があると説明している。

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一方、今回の研究を実施したOrnstein氏は「終末期の介護では家族の負担が重くなるということを、より多くの人に知ってもらいたい」と話す。また同氏は、緩和ケアサービスへのアクセスの拡充についても検討する必要性を強調。「それによって家族に対する支援サービスの提供も促されるのではないか」としている。
Lee氏もまた、ホスピスや緩和ケアにアクセスしやすい環境を整備すべきとの意見に同意し、これらの利用を阻む障壁となっている最大の要因は情報不足であることを指摘。「医師が積極的に共有しようとしない情報を知り、率直な対話をすることが、緩和ケアの普及につながるのではないか」との見方を示している。この研究は「Health Affairs」7月号に掲載された。

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