• 糖尿病患者の便秘が冠動脈疾患に独立して関連――江戸川病院

     2型糖尿病患者の便秘が、冠動脈疾患と独立した関連のあることが報告された。江戸川病院糖尿病・代謝・腎臓内科の伊藤裕之氏らの研究結果であり、詳細は「Internal Medicine」に5月1日掲載された。

     糖尿病患者は合併症の自律神経障害などの影響のために、便秘になりやすいことが知られている。ただし、糖尿病の有無にかかわらず便秘はありふれた症状であり、治療を受けていない患者が多く、疫学的な調査があまり行われていない。最近まで便秘の統一された診断基準がなかったことも、疫学データが少ない一因と考えられる。これらを背景として伊藤氏らは、同院の2型糖尿病患者を対象に便秘の有病率や関連因子を検討した。

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     対象は2019年8~9月に同院糖尿病外来を受診し、調査協力に同意した2型糖尿病患者410人。抗がん剤治療や緩和ケアを受けている患者、消化器がんの手術が予定されている患者、および炎症性腸疾患や認知症のある患者は除外されている。なお、消化器がんに対する内視鏡的粘膜切除術の既往者は対象に含まれている。対象者の主な特徴は、平均年齢66±12歳、女性42%、BMI25.8±4.4kg/m2、糖尿病罹病期間14±10年、HbA1c7.3±1.0%、インスリン療法27%、糖尿病性神経障害38%、冠動脈疾患13%など。

     便秘の有病率は患者自身の判断と、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」の定義に基づく診断の2通りで検討した。前者の自己判断による便秘の有病率は29%だった。ただし、便秘を医師に相談したことのある患者は14%に過ぎず、症状のある患者の半数未満だった。

     ガイドラインに基づく診断では26%が慢性便秘に該当し、これに「普段から下剤を使用している」と回答した患者を加えると、有病率は36%(146人)になった。なお、自己判断で「便秘でない」と回答した患者の中にも、慢性便秘の診断基準を満たす患者が8%存在した。一方、自己判断で「便秘である」と回答した患者の32%は、診断基準を満たしていなかった。

     便秘のある群は便秘でない群(264人)に比べて、高齢で女性が多く、糖尿病罹病期間が長く、それぞれ有意差が存在した。また、インスリンやスタチンが処方されている患者が多く、糖尿病性神経障害や冠動脈疾患の有病率が高いという有意差が見られた。一方、BMIは便秘のある群の方が有意に低値だった。HbA1cは有意差がなかった。

     多変量ロジスティック回帰分析の結果、冠動脈疾患は便秘に独立して関連していることが明らかになった〔オッズ比(OR)2.00(95%信頼区間1.14~3.52)〕。冠動脈疾患以外の関連因子としては、インスリン療法〔OR1.80(同1.11~2.94)〕、女性〔OR1.73(同1.09~2.37)〕、糖尿病性神経障害〔OR1.60(同1.01~2.52)〕が抽出された。反対にBMIとは負の関連が認められた〔OR0.94(同0.89~1.00)〕。

     糖尿病患者は冠動脈疾患のリスクが高い。今回の研究で、糖尿病患者の冠動脈疾患と便秘との間に有意な関連のあることが明らかになった。著者らは、「便秘は有病率の高い症状であるため、日常診療で注意が払われることが少ない。しかし、冠動脈疾患のリスク評価のために、糖尿病患者の便秘を積極的に診断することが望ましい」と結論付けている。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年5月30日
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