体重と生活習慣の変化が非アルコール性脂肪肝の発症や改善に影響

生活習慣の改善または悪化と、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症または寛解が有意に関連することがわかった。禁煙や体重の増加でNAFLDの発症が増え、減量および男性では運動を始めることで寛解が増えるという。名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科の吉岡直輝氏、石上雅敏氏らの縦断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」1月16日オンライン版に掲載された。
NAFLDはいわゆる「脂肪肝」のうち、アルコール摂取はない、あるいは障害を起こすほどの量ではない人の肝臓に脂肪が蓄積する病気で、メタボリックシンドロームの影響が肝臓に現れている状態と考えられている。進行すると非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症し、肝がんのリスクが高まる。国内では近年ウイルス性肝炎が減っているのに対し、NAFLDやNASHの増加が問題になっている。

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今回の研究の対象は、名古屋第一赤十字病院で2009~18年に健診を2回以上受けた3,121人のうち、ウイルス性肝炎やアルコール性肝疾患患者を除外した1,421人。主な背景は、初回健診時年齢53.0±11.9歳、男性50.0%、脂肪肝指数(FLI)30以上30.4%で、NAFLDの割合は34.1%だった。なお、喫煙者(全体の15.6%)や就寝前2時間以内に夕食を食べる人(21.5%)ではNAFLDが有意に多く、運動習慣のある人(23.1%)では有意に少なかった。
追跡期間(4.6±2.8年)中に、ベースライン時はNAFLDでなかった人の11.1%がNAFLDを発症し(年率2.4%/年)、NAFLDだった人の26.2%に寛解が見られた(同5.7%/年)。
NAFLD発症と関連する因子として多変量解析により、男性(調整オッズ比2.07)、追跡期間(同1.11)、脂質異常症(同2.39)とともに、喫煙者の禁煙(同2.86)が抽出された。
NAFLD寛解と関連する因子は、追跡期間(同1.12)と減量(同2.83)だった。性別に解析した場合は男性において、運動を開始すること(同2.38)も寛解と有意に関連していた。
次に、体重の変化量との関連を見ると、追跡期間中の体重増加量が大きいほどNAFLD発症が増え、体重減少量が大きいほど寛解が増えるという有意な関連が認められた。ベースライン時にNAFLDであった人の中で、年率1%/年以上の体重減少を維持できた人の約40%にNAFLDの寛解が見られた。なお、追跡期間中に禁煙した人は、非喫煙者や新たに喫煙を開始した人に比べ、体重が1%/年以上増加した割合が有意に高かった。
就寝前に食事を取ることはNAFLDと関連の深い生活習慣として知られ、今回の検討でも前述のように、ベースライン時ではNAFLD群で夕食を就寝前2時間以内に食べる人が有意に多かった。ただし、追跡期間中にこの生活習慣が変化した場合でも、その変化はNAFLD発症や寛解と独立し関連する因子ではなかった。
これらを踏まえ研究グループでは、「体重の変化はNAFLDの発症・寛解の双方と相関している。禁煙は、恐らく体重増加を介してNAFLD発症を増やすと考えられる。一方、運動の開始は男性においてはNAFLD寛解と有意に関連している」と結論をまとめている。

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