進行したCKD合併高血圧患者の予後がARBベースの降圧治療で改善 ATTEMPT-CVD研究の事後解析

進行した慢性腎臓病(CKD)を合併した高血圧患者では、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)をベースとした降圧治療により心血管疾患や腎機能の悪化が抑制され、予後が改善する可能性のあることが熊本大学大学院生体機能薬理学教授の光山勝慶氏らの研究グループの分析で分かった。

CKDが進行すると心筋梗塞や脳卒中などの心血管病の発症リスクが高まるほか、末期腎不全に至ると透析導入を余儀なくされることから重症化予防が喫緊の課題とされている。
研究グループは、ARBを適切に用いればこうした患者の予後改善が期待できるとしている。
詳細は「Scientific Reports」2月16日オンライン版に掲載された。

研究グループは今回、2型糖尿病や心血管疾患などの心血管リスク因子を一つ以上有する高リスク高血圧患者を対象に、ARBをベースとした降圧治療と通常降圧治療による各種バイオマーカーと心血管・腎イベント発症への影響を無作為化2群比較オープン試験(PROBE法)にて比較検討したATTEMPT-CVD(A Trial of Telmisartan Prevention of Cardiovascular Disease)研究の事後解析を行った。
同研究に登録した外来高血圧患者1,222人のうち、推算糸球体濾過量(eGFR)値が45mL/分/1.73m3未満あるいは尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が300mg/gクレアチニン以上のどちらかまたは両方を呈する進行CKDを合併した患者187人をARB投与の有無で分けて、心血管イベントや腎イベントの発症率と各種バイオマーカーへの影響を比較検討した。

対象とした進行CKD合併患者群では、ARB投与群と非投与群の間でベースライン時の患者背景に有意な差はみられず、両群とも3年間の追跡期間を通して血圧は良好にコントロールされていた。

解析の結果、心血管イベントおよび腎イベントの複合エンドポイントの発症率は、ARB非投与群と比べてARB投与群で有意に低かった〔ハザード比0.465、95%信頼区間(CI)0.224~0.965、P=0.040〕。
また、追跡期間中のUACRはARB非投与群と比べてARB投与群で有意に低かったが(P=0.0003)、eGFR値および血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値、血圧値には両群間で差はみられなかった。

一方で、進行CKDの合併がない患者群(1,035人)の解析では、ARB投与の有無で心血管イベントおよび腎イベントの複合イベント発症率に有意な差はみられなかった(ハザード比0.913、95%CI 0.538~1.551、P=0.737)。

さらに、心血管および腎の複合イベントの発症に関連する予後因子について多変量Cox回帰分析を行ったところ、進行CKD合併患者においてARBの服用(P=0.0268)と糖尿病の既往(P=0.0126)はこれらの発症の独立した予測因子であることが分かった。
一方で、進行CKDの合併がない患者群ではARB投与はこれらの発症とは関連していなかった。

以上の結果を踏まえて、研究グループは「進行したCKDを合併した高血圧患者において、ARBをベースとした降圧治療により心血管疾患や腎機能の悪化を抑制できる可能性のあることが分かった。
ARB治療によるこうしたベネフィットは血圧やeGFR値ではなくアルブミン尿の有意な低下と関連している可能性が考えられる」と述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2018年2月26日
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