保存期CKD患者のサルコペニアにループ利尿薬が関連か 日本人患者260人のデータを解析、東京医歯大


これまで基礎研究でループ利尿薬はマウスの骨格筋の分化と肥大を抑制する可能性が示唆されていたが、CKD患者集団を対象とした臨床研究でこれらの関連が示されたのは初めてだという。
詳細は「PLOS ONE」2月15日オンライン版に掲載された。
加齢とともに骨格筋量と筋力が低下するサルコペニアは転倒、糖尿病や脂肪肝などの代謝性疾患、CKD、多剤併用による有害事象などとの関連が報告されている。
研究グループは今回、降圧薬や利尿薬、経口血糖降下薬、尿酸降下薬など多くの薬剤を併用する場合が多い保存期のCKD患者を対象に、これらの薬剤によるサルコペニアへの影響に焦点を当てつつ、サルコペニアの有病率やリスク因子について調べる横断研究を行った。
対象は、2016年6月~2017年3月に登録された同大学病院の保存期CKD患者〔推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m3未満、65歳以上〕260人。
サルコペニアに関連すると考えられる因子(性、年齢、CKD原疾患、内服歴、合併症)のデータを抽出した。
なお、サルコペニアはAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の診断基準を用いて診断を行った。

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その結果、対象患者の4人に1人にサルコペニアが認められた。
影響を及ぼす可能性がある因子で調整した多変量解析の結果、利尿薬の使用(種類を問わない)およびループ利尿薬の使用はサルコペニアの有意なリスク因子である可能性が示された(それぞれの調整済みオッズ比;3.08、95%信頼区間1.31~7.23、P<0.010、同4.59、1.81~11.61、P<0.001)。高齢と男性、BMI低値、糖尿病の合併もサルコペニアのリスク上昇と関連する可能性が示されたが、eGFR値とその他の内服薬(RAS阻害薬、スタチンなど)の使用との有意な関連は認められなかった。
以上の結果を踏まえて、研究グループは「保存期CKD患者においてループ利尿薬の使用はサルコペニアの合併リスクと関連している可能性がある。
ループ利尿薬はCKD患者の体液量のコントロールに欠かせない薬剤で汎用されており、今回の結果はこうした患者ではサルコペニアのリスクを考慮しつつ、ループ利尿薬を適切に使用することの重要性を示唆している」と述べている。

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