治験について
治験のフェーズ

新たな臨床試験は段階的に実施されています。初期段階では、少数の参加者で実施され、安全性と有効性が評価されます。次により多くの情報(有効性と副作用)を収集する為に参加者の数を増やして次の段階に移行します。

臨床試験は、基本的には4つの段階を経て実施されます。

フェーズⅠ 試験
フェーズⅠ試験では少数のグループ(20名〜80名)を対象に安全性(投与量や副作用)を評価するために実施されます。

フェーズⅡ試験
フェーズⅡ試験ではより多くのグループ(数百名)を対象に有効性(意図した効果)を判定し、安全性をさらに評価するためにに実施されます。

フェーズⅢ試験
フェーズⅢ試験では大勢(数百名〜数千名)の方を対象に治験薬の有効性を確認致します。更に副作用を観察して安全性と使い方を確認致します。

フェーズⅣ試験
フェーズⅣ試験はお薬が承認・市販後に実施される試験です。 一般の患者さん向けに有効性と副作用をより多くの方と長い期間をかけて確認します。薬の組み合わせや、他の疾患への可能性を確認する場合もあります。

非臨床試験
フェーズⅠ試験を実施する前に非臨床試験が必要です。これは培養細胞や動物を使って、有効性と安全性を確認するものです。この段階はフェーズ0とも言われ平均3〜5年かかります。ここで得られた有効性と安全性の結果を十分に検討してから、初めてヒトを対象とした試験に進む事ができます。

治験の仕組

研究者は、まず動物を使って非臨床試験を行います。最も有力な試験だけがその後のヒトを対象とした試験に移行する事ができます。 臨床試験では、有効性と安全性についてより多くの情報が収集されます。臨床試験では、新薬候補物質と比較をする“コントロール”が使われます。基本的に治験薬、市販薬、プラセボ(乳糖やでんぷんなど、薬としての効き目のないもの)を比較します。

治験審査委員会(IRB)
Institutional Review Boardの略で治験が化学的・倫理的に正しく実施できるかを審査する委員会です。

開発に携わる医師や製薬企業等から独立した第三者機関です。治験に参加される患者さんの人権保護と安全確保の観点から公正に審議します。基本的には専門委員(医師、看護師、薬剤師など)、非専門委員(医学の専門知識を有しない人)、外部委員(医療機関と利害関係のない人)の5人以上で構成されています。審議内容は治験開始前と実施中に分かれています。

治験開始前の審議内容
  • 治験の計画は化学的か?
  • 医療機関が治験を計画通りに実施できるか?
  • 患者さんの人権・安全・福祉が守られているか?
  • 患者さんの治療に不利益にならないか?
治験実施中の審議内容
  • 治験が正しく実施されているか?
  • 安全性に問題ないか?
  • 治験を継続して大丈夫か?

また、被験者から文書によるインフォームド・コンセントを得るための方法や資料を審査し、承認しています。

試験のプロトコル
プロトコルは治験実施計画書とも呼ばれています。

治験を実施する為に厳守しなければならない要件事項が記載されています。また、治験の背景、根拠、目的、治験のデザイン、方法なども記載されています。例えば

  • 患者さんの選択・除外基準
  • 治験の実施方法や手順
  • 対象者のグループ分け方法
  • 治験の期間とデータの内容

プロトコルの記載と異なったことを行った場合、そのデータは、後の評価で使うことができず、最悪な場合は、治験自体が中止となります。

対照試験
お薬を服用して病状が回復したとき、薬の効能以外に自然治癒もしくは他の要因で改善する可能性もあります。

お薬の効果をしっかり検証する為には比較対照を設定した試験を行う必要があります。薬の臨床試験であれば、効果のない偽薬と、新たに開発した新薬を投与する2つの群で検証する必要があります。被験者さんはいずれかのグループに割り当てられます。
偽薬を与えられた方が対照試験の対象となるグループになります。別名コントロールグループと呼ばれています。
対照試験の目的はそれぞれのグループの結果を比べて有意差があったか判断します。また、対照試験では偽薬を与えられた被験者も偽薬である事を知らない為、そのバイアスを取り除く事ができます。

プラセボ効果
治ると強く信じ込む事で治るケースがあります。

偽薬でも薬だと信じ込む事で症状の改善が見られる事があります。薬を飲んでいる事による精神的な安心感と先生に診察してもらっている事で改善する事があります。このような効果をプラセボ効果といいます。
治験ではプラセボも新薬と同じように与えられますので被験者さんはその区別がつきません。よって、プラセボを服用していても新薬だと信じていれば症状が改善されるケースがあります。開発に携わる方は、プラセボ効果も考慮して治験のデザインを行っております。

治験の症例数

新薬の効果は人によってかわります。効果をしっかり立証するには十分なデータをとる必要があります。例えば、10人中7人に効果が見られたとして十分なデータとは言えません。しかし、1000人中700人の場合であれば十分なデータで効果を評価する事ができます。統計学的な考慮を含めて開発に携わる方は必要症例数を算出しています。

組入

治験では効果を比較する為に2つのグループに分けて被験者さんを割り付けます。目的治療群(治験薬を投与して効果を評価する群)と対象群(対照薬あるいはプラセボを投与する群)これらの割り付けを無作為に行う事で治療効果が高そうな患者さんに治験薬の群に割り付けるバイアスを減らす事ができます。無作為に患者さんを各群に割り付ける作業を組入(ランダム化)と呼ばれています。

盲検化(Blinding)

盲検化された治験では、被験者も治験実施医師も割り付けられた治療を知らないという事です。これを二重盲検試験(double blind test)と言います。被験者のみが治験薬の中身を知らない場合は単盲検試験(single blind test)と言います。
これは、被験者や治験実施医師が割り付けられた治療をしっている事で生じうる管理、治療、評価の違いや結果の解釈の違いで生じうるバイアスを最小限に抑える為です。ただし、緊急の場合は治験実施医師は確認する事ができます。

治験に携わるスタッフ
治験を実施する為には様々な方のご協力が必要になります。

治験依頼者
治験計画の立案、運営、管理など製品開発に責任を負う製薬会社。治験結果をまとめ、厚生労働省に医薬品の承認申請を行います。

モニター
各試験の医療施設担当者で、病院を訪問して、治験が適切に行われていること、治験の結果がきちんと整理・報告されていることを確認します。

治験審査委員会
医師・薬剤師などの専門職員、専門職以外の方が委任され、治験の計画、患者さんの人権が十分に配慮されているか、倫理的かつ科学的に審査します。

治験担当医師
患者さんの主治医の立場で、治験責任医師または治験分担医師として治験に関わります。

治験責任医師
病院の中での治験業務を統一する医師で、責任を持つ医師です。治験を適正に行うために、十分な臨床経験を持つことが求められます。

治験分担医師
治験責任医師の指導の下に、治験に係る業務を担当する医師です。

治験コーディネーター
治験責任医師の指導の下に、治験の支援業務を行います。
患者さん、治験担当医師、治験依頼者、モニター、治験事務局と連携し、全体をコーディネートすることによって、治験がスムーズに進むよう業務を行います。

治験事務局
治験依頼者への説明、申請受付、ヒヤリング、治験審査委員会での事務的業務一般、及び患者さんからの問い合わせ対応をします。

治験担当薬剤師
承認された治験薬について、受け入れ、品質管理(温度条件・有効期限・ロット管理)、治験実施計画に沿った処方箋による交付、患者さんからの未服用薬の受領、治験期間終了までの管理を行います。

臨床検査技師
治験実施計画にしたがって、採血、検査を行います。

看護師
外来や病棟で治験がスムーズに行えるよう協力します。

臨床試験の資金について

臨床試験は、政府機関、研究機関、財団、慈善団体、製薬、医療機器、バイオテクノロジー企業を含む様々な組織や個人の資金提供を受けて実施されています。

治験対象者

様々な治験があらゆる場所で実施されていますのでほとんどの方が治験の対象者になりえます。年齢も子供からお年寄りまで様々で疾患も進行具合によって参加できる治験が変わってきます。治験の参加は自由意志でいつでも辞退をする事ができます。その後のお医者さんとの関係性には全く影響しません。

治験によっては健康な方を対象とした安全性を確認する試験があります。基本的にはフェーズⅠ試験になります。この場合は健康の方と患者さんを比べて効果と副作用を評価します。

多くの治験は患者さんを対象とした試験になります。新薬を投与してその効果を評価します。

治験に参加できない理由

全ての治験には参加できる方のガイドラインがあります。基本劇には選択・除外基準と呼ばれています。参加する為の基準を選択基準と呼び、該当しない基準を除外基準と呼びます。これらの基準は年齢、性別、疾患、治療歴、合併症などが基準になっています。しっかりとした基準を設ける事で治験の安全性と効果を確認しています。

参加できない事例:

  • 対象疾患の診断がない場合
  • 疾患の進行具合の違いによって
  • お薬が併用できない場合
  • 年齢が該当しない場合
  • 既に多くの方が参加中で募集が終了した場合
事前検診

治験に参加する前に必ず事前検診を行う必要があります。事前検診の結果によって参加可否が決まり、事前検診によって患者さんの状況をより理解する事で最終的に改善の評価をする事ができます。治験参加中はあらゆる検査をして常に効果を評価していきます。

治験終了後

治験が終了すると試験中のデータを全て分析します。分析結果によって次のフェーズに移行するか承認のプロセスに進むか判断します。最終的に新薬の安全性と効果が認められると一般の治療薬として世にでる事ができます。

データの分析には時間がかかります。よって、結果がでるまでに遅れが生じる事があります。特に何千人という大規模な治験の場合は何年もかかる場合があります。

治験の種類

治験には色々な種類の治験があります。

企業治験
新しいお薬・医療機器等の安全性と有効性を評価して、厚生労働省から承認を得ることを目的とした試験です。多くの場合は製薬企業が医師に依頼をして実施されています。

医師主導治験
製薬企業の採算性などの理由で開発がされず、海外で承認済みのお薬を医療上の必要性に基づいて、企業ではなく医師が治験を実施することが医師主導治験といいます。

拡大治験
拡大治験は、薬の承認や保険適用前に命に関わる理由から、患者さんに新しいお薬を検討する試験です。治療法などがない場合に検討されます。

治験が必要な理由

治験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験なしでは新しいお薬や治療法の効果や安全性を確認する事はできません。よって、ヒト試験の前に行う非臨床試験の結果で新しい治療法の効果を推測する事ができます。

治験によって、より多くの方のデータを分析する事で今よりもよりよいお薬を開発し治療の改善を見込む事ができます。少人数のデータではなく大勢のデータを評価する事でより実証された改善が見込まれます。最新医療のほとんどは治験の結果によって開発されています。様々な疾患(癌、心臓病、高血圧、喘息など)の新しい治療法は治験を通して開発されています。治験は治療の改善に貢献しより多くの方が長生きし、痛みを軽減し、障害を克服するきっかけになっています。

治験による貢献:

  • ワクチンを開発して病気を予防
  • 採血検査によって病気の発見や診断
  • 新薬や新しい治療法によって病気の改善
  • 生活習慣の改善をテストする事で症状を改善

治験によって治療の基準が上がればヘルスケアサービスの発展にも繋がります。治験に携わるメディカルスタッフは患者さんのケアを常に考えて治験を実施しております。SearchMyTrialでは治験の情報を皆様にもっとみじかに感じて頂けるようなサービスを目指しております。