糖尿病とがんの併発が認知症リスクをより高める――JPHC研究

近年、糖尿病が認知症やがんの危険因子であることが注目されているが、糖尿病とがんを併発した場合、認知症のリスクがより高くなる可能性が報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Psychiatry and Clinical Neurosciences」6月21日オンライン版に掲載された。

糖尿病、認知症、がんは、いずれも高齢者に多い疾患のため、人口の高齢化によりこれらを併発する患者が増加する。ただし、単に加齢によって偶発的な併発が増えるのではなく、糖尿病が認知症やがんを増やすという関係が明らかになってきた。

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例えば、糖尿病患者ではアルツハイマー病が約1.5倍、血管性認知症が約2.5倍多いとされている。糖尿病患者が認知症になると低血糖のリスクが上昇するなどのために血糖コントロールが困難になりやすい。また糖尿病とがんの関係については、男性糖尿病患者のがん発症リスクが1.27 倍、女性は1.21倍というJPHC研究の報告がある。その一方で、がんが認知症の危険因子かどうかという点についてはこれまでの報告の結果が一致しておらず、また糖尿病とがんを併発した場合の認知機能への影響も十分に検討されていない。

今回発表された報告は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した1,244人(脳卒中罹患者は除外)のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、1,244人中421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断された。

年齢、性別、教育歴、アルコール摂取、喫煙、運動、魚摂取量で調整した上で、軽度認知障害・認知症のリスクを検討すると、糖尿病では認知症リスクの有意な上昇が認められた。さらに糖尿病とがんを併発していると認知症リスクはより顕著となり、両者とも罹患していない場合に比べオッズ比が約16倍になった。また両者を併発している場合は、軽度認知障害のリスクも有意に上昇することがわかった。なお、がん単独では軽度認知障害・認知症の有意なリスク上昇はみられなかった。

糖尿病でがんのリスクが上昇する機序としては、インスリン抵抗性の関与が想定されている。また、がんの罹患後にインスリン抵抗性が亢進するとの報告や、インスリン抵抗性が認知症の発症に関与するとの報告もあることから、今回の結果について研究グループでは、「がんと糖尿病を併発した群は他の群よりもインスリン抵抗性が高く、結果として認知症リスクが上昇した可能性が考えられる」と考察している。

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HealthDay News 2019年8月26日
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