腸内細菌叢の乱れを免疫誘導で制御――肥満・糖尿病予防ワクチンに期待

近年、さまざまな疾患領域において腸内細菌の関与がトピックとなっている中、腸管などの粘膜面の疾患特異的な免疫をワクチンによって強化する方法が開発された。細菌感染症の治療だけでなく、肥満や糖尿病などの予防への応用も期待される。大阪市立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学の植松智氏・藤本康介氏らのグループの研究によるもので、詳細は「Gastroenterology」8月21日オンライン版に掲載された。

 新たに開発されたのは、粘膜面に存在しているIgA(免疫グロブリンA)という細菌やウイルスなどの侵入を防ぐ仕組みを、感染防御のために必要な粘膜へ誘導するワクチン。このワクチンを接種後に、感染防御に必要な粘膜面へ抗原を加えることで、発症を予防したい疾患に対する免疫力を高めることができる。細菌感染症の治療に使われる抗生物質には、体の恒常性維持に必要な常在菌も殺傷してしまうリスクがあるのに対し、新しく開発されたこの方法は標的とする細菌の粘膜面への侵入や定着を阻害できるというメリットもある。

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 研究グループではこの方法の効果を、細菌性肺炎の原因菌として最も多い肺炎球菌で検討した。肺炎球菌に対するワクチンを作成しマウスに接種。その6週間後に肺炎球菌の抗原を鼻から投与したところ、気管支肺胞洗浄液中の抗原特異的IgA およびIgGが、ワクチンを接種していないマウスに比較し有意に上昇した。さらに肺炎球菌の定着が阻害され、肺炎の重症化が抑制されることも確認できた。

 また、肥満や糖尿病との関連が報告されているClostridium ramosumという腸内常在細菌に対するワクチンを作成。このワクチンを、ヒト肥満者の糞便を定着させたノトバイオートマウス(無菌マウスに特定の微生物のみを定着させたマウス)に接種して高脂肪食を与え飼育したところ、ワクチンを接種していないマウスに比較し体重増加が有意に少なく、ブドウ糖負荷後の血糖上昇も有意に抑制されていた。

 ゲノム解析研究が進んだことで、腸内細菌叢の乱れが肥満や糖尿病、動脈硬化、炎症性腸疾患、関節リウマチ、大腸がん、パーキンソン病など、多くの疾患と関係していることが分かってきている。しかしこれまで疾患特異的IgAを狙い通りに誘導する技術が存在しなかったため、体に有益な細菌へ影響を及ぼさずに疾患を予防・治療する効果的な方法は確立されていない。

 研究者らは、「このワクチンをヒトで実用化することで、病原体の侵入門戸である粘膜において強力な免疫応答を誘導できる。腸内細菌を標的として応用すれば、これまで制御できなかった腸内細菌叢の乱れに関連するさまざまな疾患の新たな治療アプローチとなり得る」と述べている。

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HealthDay News 2019年9月9日
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