COVID-19パンデミック時の自殺による超過死亡――警察庁データの解析

 2010年以降2020年9月までの国内の自殺による死亡者数を月別に解析した結果、2020年7~9月の女性の自殺死亡者数が統計的予測範囲を超過していたことが明らかになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる影響が大きいと考えられ、自殺という最悪の結果を防ぐために、女性のメンタルヘルスに対する早急な対策が必要と言えそうだ。

 この研究は慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の野村周平氏らが、警察庁の月別自殺死亡者数データを解析したもの。結果の詳細は「Psychiatry Research」1月号に掲載された。

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 国内の自殺件数は近年減少傾向にある。しかし、COVID-19パンデミックに伴う外出自粛や社会的距離の確保などが市民の社会的孤立につながり、不安やうつなどのメンタルヘルス上の問題を引き起こしている可能性が報告されている。さらに、経済へのダメージは2008年のリーマンショックを上回るとされている。具体的に国内でも10月16日時点で6万6,000人以上がCOVID-19により失業したと推計されており、失業率は3%を超えた。このような状況が自殺件数を押し上げている可能性がある。

 野村氏らは、2010年以降2020年9月までの自殺による死亡者数をもとに、準ポアソン回帰モデルという統計学的手法を用い、各月の自殺死亡者数の予測値を算出し、実際の自殺死亡者数と比較した。95%予測区間の上限を超えた場合を超過死亡(何らかの原因により通常の予測を超える死亡者数の上昇)が認められた月と判定した。一方で、95%予測区間の下限を下回った場合を過少死亡の月とした。また実際の死者数と予測値および95%予測区間との差分のレンジ、さらにそれらの予測値に占める割合を、超過・過少死亡数および割合として報告している。

 国内でCOVID-19の感染拡大が始まった2020年以降のデータを性別に見ると、女性は2月の過少死亡率が-0.6~-13.8%、4月も同-8.8~-18.0%と、このふた月は自殺による死亡者数が予測値の下限を有意に下回った。しかし7月には22.1~32.3%の超過死亡が観察され、8月にも19.3~33.0%、9月には19.8~33.6%の有意な超過死亡が発生していた。なお、2019年以前は自殺による超過死亡は確認されなかった。

 一方、男性はパンデミック以前の2018年3月(超過死亡率4.9~20.2%)と2020年1月(同1.5~14.2%)に自殺による死亡者数の有意な増加が観察されたが、パンデミック以降の異常値は2020年4月の同-3.6~-14.0%という低値のみが有意だった。

 この結果について著者らは、いくつかの考察を述べている。まず、女性・男性ともに国内のパンデミック初期にあたる2020年4月に、自殺による死亡者数が予測値よりも有意に少なかった点については、「危機の初期には自殺リスクが低下し、その後、上昇に転ずるという科学的エビデンスと一致している」という。

 また、調査対象期間の原死因を問わない全ての死亡の超過率は1%未満である一方で、女性の自殺による超過死亡率が20~30%に及んだことは、COVID-19パンデミックが女性の自殺リスクに与えた影響が極めて大きいことを示しているという。COVID-19パンデミックの自殺リスクへの影響が、9月時点では女性に対してのみ有意であることに関しては、経済の停滞により特に女性の就業環境が悪化していることや、パートナーからの暴力の増加などが背景にあるのではないかと述べている。

 就業環境については、COVID-19パンデミックにより世界的に女性は男性より解雇されやすいなどの不平等な状況が存在すること、また政策や政府による女性への経済援助が効果的なサポートであることに言及している。パートナーからの暴力についても、世界的にパンデミック発生後から増加しており、配偶者暴力相談支援センターなど相談窓口を充実させる必要性を述べている。加えて国内での著名人の自殺報道が、いわゆる後追い自殺を招くことを指摘し、多角的な自殺予防への取り組みが必要であるとまとめている。

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HealthDay News 2020年12月21日
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