対策が徹底された病院内のCOVID-19感染リスクは高くない―国立国際医療C

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進められているが、集団免疫が得られるまでは、感染防御対策の継続が求められる。一方でパンデミック以来、医療機関での感染リスク回避のために患者の受診抑制が起きていることが懸念されている。では、医療機関内は本当にCOVID-19感染リスクが高いのだろうか。

 国内でのCOVID-19発生初期から多数の患者を受け入れてきた国立国際医療研究センター(NCGM)の田中暁人副臨床検査技師長らが「Journal of Infection」に1月28日報告したデータによると、必ずしも医療機関での感染リスクが高いとは言えないようだ。昨年7月時点で、同センター職員の新型コロナウイルス抗体陽性率は、一般住民よりもむしろ低いレベルだったという。調査を統括した大曲貴夫国際感染症センター長は、「適切な院内感染対策により医療従事者の感染リスクを大幅に低減できることを支持するデータが得られた」と述べるとともに、同センターが策定し公開している院内感染対策マニュアルの利活用を医療機関に呼び掛けている。

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 この調査は、同センター職員のうち、主としてCOVID-19関連業務従事者を対象に参加を募り、同意が得られた1,228人(参加率78%)を対象に行われた。平均年齢36±11歳で71%が女性であり、看護師が49%、医師19%、その他の医療専門職14%、事務・管理職10%。850人(69%)はCOVID-19に関する業務を行ったことがあり、その4割(343人)は感染リスクの高い業務に従事していた。

 調査では、アボット社とロシュ社の定性試薬を用いて血中IgG抗体を測定した。いずれかの試薬で陽性と判定されたのは2人のみで、抗体陽性率は0.16%であった。この値は、ほぼ同じ時期(同年6月)に東京で行われた住民調査のデータを基に、同じ定義で算出した0.41%よりも低かった。陽性者はいずれも業務上、COVID-19患者とのかかわりはなかった。

 国内の感染症治療の基幹病院として、同センターは患者の受け入れだけでなく、チャーター機で中国・武漢から帰国した人の検診、ダイヤモンド・プリンセス号の医療支援、PCR検査センターなど、COVID-19に関連した多くの施策にかかわってきた。同時に、個人用保護具の適切な使用、頻回の手洗い、全員が常時マスクをする(ユニバーサルマスキング)、訪問者の制限や来院時の体温チェック、出勤前の検温といった院内感染を防ぐ包括的な対策を流行初期から導入してきた。

 他方、国内で患者数が最多である東京、その中で大規模な繁華街・歓楽街を擁する新宿にある同センター病院の職員は、普段の生活においても感染リスクに直面している。院内感染管理室の杦木優子副看護師長は、流行状況に応じて日常生活上の予防行動の要点をまとめ、ことわざ(例えば「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰いゆ」「浅い川も深く渡れ」など)を添えて毎週、職員に周知している。著者らは、こうした取り組みが職員の予防意識を高め、行動変容を促し、感染を抑えているとみている。

 これらの経験を基に同センターでは、「NCGMにおけるCOVID-19院内感染対策マニュアル」を策定して外部に発信している。内容は随時改訂されており、最新版は3月10日改訂のバージョン4.2。同院のサイトから自由にアクセス可能だ。

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参考情報:リンク先NCGMにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(疑い含む)院内感染対策マニュアル V.4.2
HealthDay News 2021年4月12日
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