COVID-19第二波・三波に備えて続く、国内アカデミアの研究開発

 2月26日のイベント自粛要請から3カ月が経過した5月25日、緊急事態宣言が全面解除され、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は縮小に向かっている。しかしいまだ感染予防のためのワクチンがなく、治療法が確立されていない。危惧される第二波・三波のパンデミックに対し国内アカデミアの研究開発が続けられている。それらのうち最近1カ月以内に発表された報告をピックアップし紹介する。

 東京大学医学部附属病院は5月8日、肺炎を発症しているCOVID-19陽性患者に対するファビピラビル(商品名アビガン)とナファモスタットメシル酸塩(同フサン)の併用療法を、医師主導の臨床研究として多施設共同で実施すると発表した。前者は新型インフルエンザ治療薬、後者は膵炎や播種性血管内凝固症(DIC)の治療薬であり、いずれも国内企業が開発した薬剤。これら両剤は異なる機序で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を阻害し、また後者についてはCOVID-19の重症化との関連が示唆されているDICへの効果も期待される。この研究では、両剤併用群とファビピラビル単独群とを比較し有効性・安全性を検討する。

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 5月13日には、COVID-19はネコの間で伝播するとの報告が、東京大学医科学研究所から発表された。SARS-CoV-2はネコの呼吸器でも増殖し、ネコ間で接触感染により容易に伝播することが確認された。感染したネコは明らかな症状を呈さないという。なお、飼いネコや動物園のネコ科の動物からSARS-CoV-2が検出されたことが、米ニューヨークで確認されている。ただし現時点でネコからヒトへの感染は報告されていない。

 医学系以外の領域でもCOVID-19関連研究が進められている。5月14日、北海道大学大学院工学研究院と山梨大学大学院総合研究部は、下水に含まれるウイルス量を計測することが感染拡大防止につながる可能性を発表した。COVID-19の主要な感染経路は飛沫感染や接触感染だが、感染者の糞便中からもウイルスが検出され、下水中にもウイルスは存在している。下水中のウイルス量をモニタリングすることで感染の拡大兆候を把握できる可能性がある。15日には両大学以外の大学も加わり、日本水環境学会を主体とする「COVID-19タスクフォース」が立ち上がり、多施設共同研究が始まった。

 5月21日には7大学共同による「コロナ制圧タスクフォース」が発足した。参画大学は、慶應義塾大学、東京医科歯科大学、大阪大学、東京大学医科学研究所、東京工業大学、北里大学、京都大学。遺伝学的知見に基づき、粘膜免疫ワクチンの開発を共同研究により促進する。まず、COVID-19に感染しても軽症または無症状で済んだ人と重症化した人の遺伝子配列の比較から、出現頻度に違いのある遺伝子多型を特定する。現在、検体の集積を進めており、19日時点で10施設が倫理委員会の承認済、40施設が承認申請中という。

 大阪大学発バイオベンチャーのアンジェスは5月25日、大阪大学と共同開発中のCOVID-19のDNAワクチンを動物に投与した結果、抗体価の上昇が確認されたことを発表した。DNAワクチンは次世代のワクチンと呼ばれており、短期間で大量に生産できるという特徴がある。また病原体を使用しないため、安全性が高いと考えられている。今後、毒性試験の結果を確認後に臨床試験へ移行する。

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参考情報:東京大学医学部附属病院東京大学医科学研究所北海道大学山梨大学日本水環境学会コロナ制圧タスクフォースアンジェス株式会社
HealthDay News 2020年6月1日
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