COVID-19レジストリ中間報告――国立国際医療研究センター

国立国際医療研究センターはこのほど、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者のレジストリデータを解析した、中間報告を公表した。死亡率は欧米の3分の1にとどまることなど、国内の治療状況の詳細が明らかになった。
このレジストリには748施設のCOVID-19入院患者4,797人(8月3日時点)、国内の検査陽性者の12.3%に当たるデータが登録されている。今回公表された結果はそのうち、第二波の感染拡大が本格化する直前の7月7日時点までに登録された、227施設、2,638人のデータを解析したもの。

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まず、重症度の内訳を見ると、61.8%は最重症時でも酸素投与を必要としない軽症であり、酸素投与を必要としたのは29.7%、気管挿管や体外式膜型人工肺(ECMO)を必要としたのは8.5%だった。患者背景としては、男性、高齢者、喫煙者で、酸素投与などが必要になる重症例の割合が多かった。
具体的には、解析対象者全体では男性の割合が58.9%であるのに対し、酸素投与不要例では53.2%と少ない一方、酸素投与必要例では65.0%であり、気管挿管などを必要とした症例では78.9%を占めていた。また年齢は、対象者全体の中央値が56歳、酸素投与不要例は49歳であるのに対し、酸素投与必要例は68歳、気管挿管などを必要とした症例は66歳だった。喫煙歴のある人の割合は全体で36.3%、酸素投与不要例では32.0%、酸素投与必要例では43.1%、気管挿管などを必要とした症例では43.9%だった。
次に、併存疾患に関する解析結果を見ると、肥満が5.5%、軽症糖尿病(合併症なし)が14.2%、重症糖尿病(合併症あり)が2.5%などであり、欧米に比べて低値だった。例えば、英国からは軽症糖尿病22%、重症糖尿病8.2%、肥満9%、米国からは糖尿病28~35%、肥満40%といった数値が報告されている。
COVID-19に特徴的な症状として、味覚や嗅覚の障害が報告されているが、今回の解析では、味覚障害は17.1%、嗅覚障害は15.1%にとどまった。ただし、味覚・嗅覚障害の頻度は海外からの報告でもばらつきが大きく、また、それらがCOVID-19の関連症状であるとの認識が定着したことで、今後は報告が増える可能性があるという。
退院時転帰は、自宅退院が66.9%、転院が16.6%、療養施設などへの入所が9.1%、死亡が7.5%だった。重症度別に解析すると、酸素投与不要例では77.0%と8割近くが自宅退院し、転院が11.4%、死亡は0.4%だった。酸素投与必要例では自宅退院56.1%、転院23.0%、死亡14.7%であり、気管挿管などを必要とした症例では自宅退院30.6%、転院32.4%、死亡33.8%だった。なお、海外での死亡の割合は、英国26%、米国21~24%、中国28%と報告されており、それらに比べて3分の1程度と少ないことが示された。
本レジストリは今後、重症化因子の同定、薬剤の有効性の評価、生活習慣の関与の解明などにも活用されるという。

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