COVID-19治療薬の研究・開発、国内の動向

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大抑止のため緊急事態宣言の延長が決まった。一方で新規感染者数は減少傾向にあり、外出自粛要請解除といった出口戦略の模索も始まった。治療薬の研究・開発も加速している。その中から国内での主な動きをまとめる。
日本も治験に加わった米ギリアド・サイエンシズ社の「レムデシビル(商品名ベクルリー)」が今月8日、初のCOVID-19治療薬として厚生労働省に承認された。レムデシビルは、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)などに対する抗ウイルス活性が、in vitroおよび動物対象試験で確認されている開発段階にあった核酸アナログ製剤。米国でCOVID-19への緊急使用が許可されたことに伴い、国内でも特例承認制度のもと認可された。

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日本発の治療薬の開発も急ピッチだ。最も早い認可が有力視されているのは、富士フイルム富山化学の「ファビピラビル(同アビガン)」だ。同薬は、他の抗インフルエンザ薬が無効な新型・再興型インフルエンザが発生し、国が必要と判断した場合のみ使用可能な治療薬として、2014年に承認済。現在に至るまでこの条件に合致する状況は発生していないが、国内に200万人分(新型インフルエンザ治療として用いた場合)の備蓄がある。3月からCOVID-19治療薬として第III相臨床試験が開始されており、今月4日には安倍首相が「月内承認を目指したい」と発言している。
既に臨床応用されている薬剤をCOVID-19に用いる試みも活発だ。帝人ファーマの「シクレソニド(同オルベスコ)」は喘息治療薬として使用されている吸入ステロイドだが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で発生したCOVID-19に用いられたことで注目され、現在国内で治験が行われている。
急性膵炎治療薬として用いられている「ナファモスタット」は、蛋白分解酵素阻害作用によりCOVID-19ウイルス(SARS-CoV2)のエンベローブと細胞膜の膜融合を阻害することが基礎研究で示され、COVID-19治療への転用を目指し国内で治験が進行中だ。また関節リウマチ治療薬の抗IL-6受容体抗体である中外製薬の「トシリズマブ(同アクテムラ)」は、重症肺炎に伴うサイトカインストームの抑制効果が期待されており、海外では治験進行中で国内でも治験開始段階にある。
一方、COVID-19に焦点を当てた新規治療薬の開発も進められている。武田薬品工業は、米国のCSLベーリング社などと共同し高度免疫グロブリン製剤を開発中。今月8日には、その共同体の参画企業が10社に拡大したと発表した。今後、開発スピードをより加速させるという。塩野義製薬も2020年度内に新規抗ウイルス薬の治験開始を目指すことを発表している。
そのほかの国内医薬品企業のCOVID-19関連の動きとしては、ワクチンや診断薬・検査キットの開発に複数社が名乗りを上げており、後者については既に販売されているものも少なくない。さらにアカデミア発の新しい動きとしては、北里大学のグループがSARS-CoV-2の中和能を有する抗体の取得に成功したと、今月7日に発表した。今後、治療薬や検査薬の開発につながる可能性があるという。
なお、海外に目を転じると、米国からはCOVID-19治療に期待された抗マラリア薬の「クロロキン」に関して、食品医薬品局(FDA)が副作用に注意喚起する見解を発表した。COVID-19パンデミックの緊急性を背景に、安全性や有効性の検証が不十分なまま、さまざまな治療を試みる動きがあるとも報道されている。国内での新薬開発の迅速かつ安全な進展が期待される。
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HealthDay News 2020年5月11日
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