新たな機序のがん治療薬、幅広い種類のがんで有望な成績

がんに関わるシグナル伝達経路の異常を標的とした新たな作用機序のがん治療薬が、種類を問わずさまざまな固形がんの患者の治療に有望であることが予備的な臨床試験によって明らかになった。

この試験の成績は「Cancer Discovery」12月15日オンライン版に掲載された。

この臨床試験は、米マサチューセッツ総合病院のRyan Sullivan氏が率いる研究グループが実施したもの。さまざまな種類の進行した固形がんの患者のうち、前治療による効果が得られなかった患者135人が登録された。

同試験で使用したのは、細胞内の情報伝達で重要な役割を果たしている分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)のうち、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)1/2を阻害する作用を有するulixertinibと呼ばれる新薬だ。
同薬による治療の結果、がんの種類にかかわらず、患者の一部で「部分奏効」または「疾患安定」が認められたという。

米ノースウェル・ヘルス、ハンチントン病院のMaria Nieto氏によると、MAPK/ERK経路は細胞表面にある受容体と細胞核内の遺伝子との間で情報を伝えている。
この経路の上流にあるRAS遺伝子やBRAF遺伝子などに変異が生じると経路が異常に活性化され、細胞の増殖を制御できなくなって発がんにつながる。
こうした異常は多くのがんに共通してみられるため、この経路を阻害するulixertinibは「メラノーマや肺がん、大腸がん、低悪性度の卵巣がんなど、さまざまな種類のがんの治療に使用できる可能性がある」という。

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メラノーマなどの治療で既に使用されているBRAF阻害薬やMEK阻害薬も、ulixertinibと同様、MAPK/ERK経路上の活性化因子を標的とした分子標的薬だ。
しかし、これらの薬剤では治療を受けた患者の一部で耐性が生じることが知られており、その原因についてSullivan氏は「これらの因子はMAPK/ERK経路の上流側に位置しているため、阻害しても別の経路からERKが活性化されてしまうからだ」と説明する。
こうしたことから、MAPK/ERK経路における「最終的な制御因子」であるERKを標的とすれば、がん細胞の薬剤耐性を回避できる可能性が示されていたという。

また、BRAF阻害薬はBRAF遺伝子のコドン600における変異(BRAF V600変異)がある患者に対して使用されるが、それ以外のBRAF遺伝子変異を有する患者に対する治療薬はなかった。
ulixertinibは、こうした患者に有用である可能性がある。

副作用に関しては、同氏らは「許容できる忍容性プロファイル」であり、「ほとんどの副作用は重大なものではなかった」としているが、今回はまだ小規模な第1相試験の段階であるため、今後より大規模な試験で安全性を検証する必要があるとの見解を示している。

米レノックス・ヒル病院のStephanie Bernik氏は「情報の伝達を最終的な段階で阻害し、がん細胞の増殖を止めるこの新薬には大きな可能性がある」と期待を寄せ、「同薬を他の治療薬と併用すれば相乗的な効果が生まれ、がん細胞が増殖を続けることをさらに困難にさせるものと考えられる」としている。

この臨床試験は同薬の開発元であるBiomed Valley社の資金提供を受けて実施された。

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HealthDay News 2017年12月15日
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