「スマホ操作1日5時間以上」で手根管症候群リスク増大か

スマートフォンなどの携帯型電子機器を長時間使用すると、手指に痛みやしびれをもたらす手根管症候群のリスクが高まる可能性が、香港理工大学医療技術・情報学部のPeter White氏らによる研究で示された。
手根管は、手の付け根にある骨と靭帯に囲まれた狭く硬い通路。その中を走行している「正中神経」が頻繁に圧迫されると、手指の疼痛やしびれ、刺すような痛み、握力低下といった手根管症候群の症状が現れる場合がある。
今回、White氏らは香港の大学生48人を対象に、スマートフォンやタブレット端末、ゲーム用機器などの携帯型端末の長時間使用が手根管症候群リスクを高めるのかどうか調べた。
このうち半数は1日当たりの端末の使用時間が平均5時間以上のヘビーユーザーで、残る半数は5時間未満のユーザーだった。全ての学生に対し、首や肩、背中、肘、手首および手の疼痛または不快感に関する質問票に答えてもらったほか、手首部分の超音波検査やファレンテストなどの理学的検査も実施した。
その結果、1日5時間以上のヘビーユーザーは5時間未満のユーザーと比べて理学的検査で陽性となる割合が高く、自己評価による手首や手の疼痛が強い割合も高かった。筋骨格の疼痛や不快感を訴える学生の割合は、5時間未満のユーザーの12%に対してヘビーユーザーでは54%に上った。また、ヘビーユーザーでは正中神経の断面積が有意に大きかった。さらに使用時間が長いほど手首および手の疼痛は強く長期間続くことも分かった。

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この結果を踏まえ、White氏らは「携帯型端末の操作で必要とされるクリックやスワイプ、スクロール、タップ、プレスといった指の動作が繰り返されることによって、正中神経が膨張したり、圧迫されたりするのではないか」と考察。「携帯型の端末を使用する際には注意が必要」と結論づけている。また、同氏は「手根管症候群リスクをできるだけ抑えるには、携帯型端末の操作時にできるだけ手首を真っすぐにしておくとよい」と助言している。
ただし、この研究はスマートフォンの使い過ぎが原因で手根管症候群を発症することを証明するものではない。研究結果の詳細は「Muscle and Nerve」6月21日オンライン版に掲載された。