日本の医療費増加に最も影響する心血管危険因子とは? 獨協医大の研究グループ

健康診断を受診した茨城県の住民を対象とした研究から、心血管危険因子の中でも「高血圧」が医療費の増加に最も影響を及ぼす因子であり、その影響度は糖尿病や脂質異常症よりも大きく、腹部肥満の有無にかかわらないことを、獨協医科大学公衆衛生学准教授の西連地利己氏らの研究グループが明らかにした。生活習慣病に関連した医療費を抑えるには、腹部肥満の有無にかかわらず高血圧の予防が肝要だという。詳細は「Journal of Epidemiology」8月号に掲載された。
これまで糖尿病や脂質異常症、高血圧といった心血管危険因子と腹部肥満が医療費に及ぼす影響は明らかにされていなかった。そこで、西連地氏らは、茨城県の健康診断を受診した住民を対象とした茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study)のデータを用いて、肥満に関連した心血管危険因子の医療費への影響度を腹部肥満の有無別に比較検討した。

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対象は、同研究の第2コホートの参加者のうち、国民健康保険に加入する40~75歳の住民4万3,469人。2009~2013年の対象者の診療報酬データを追跡し、糖尿病、LDL-コレステロール(LDL-C)高値、HDL-コレステロール(HDL-C)低値、高血圧の各心血管危険因子による医療費への影響度を腹部肥満の有無別に比較検討した。なお、腹部肥満はウエスト周囲長が男性で85cm以上、女性で90cm以上と定義した。
その結果、心血管危険因子および腹部肥満がない場合と比べた医療費比(health expenditure ratio;HER)は、腹部肥満を伴わない場合には糖尿病が1.58倍、高血圧が1.31倍、HDL-C低値が1.27倍、LDL-C高値が1.06倍であり、肥満を伴う場合にはそれぞれ1.42倍、1.26倍、1.11倍、1.03倍、腹部肥満のみで他に心血管危険因子がない場合には1.15倍であった。また、腹部肥満を伴うLDL-C高値を除いて、各危険因子と医療費との間には有意な関連が認められた。
一方で、各心血管危険因子の人口寄与割合(population attributable fraction;PAF)を比較したところ、腹部肥満を伴わない場合には高血圧が6.5%と最も高く、糖尿病(2.8%)、LDL-C高値(0.8%)、HDL-C低値(0.7%)が続き、腹部肥満を伴う場合でも高血圧が5.0%と最も高く、糖尿病(2.3%)、腹部肥満(1.0%)、HDL-C低値(0.4%)が続いた。
以上の結果から、西連地氏らは「肥満に関連するとされる心血管危険因子の中でも高血圧は、腹部肥満の有無にかかわらず医療費の増加に最も大きく寄与すると考えられる」と結論づけている。

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