認知症でもドラム叩きで認知機能が改善――理研など

 認知症があっても大勢で輪になりドラムを叩くという体験を楽しむだけで、認知機能が改善する可能性のあることが報告された。理化学研究所計算工学応用開発ユニット(ISC)の宮﨑敦子氏らが、「Frontiers in Aging Neuroscience」7月2日オンライン版に報告した。認知機能だけでなく、上肢機能の改善効果も認められたという。

 認知症の改善に向けてさまざまな介入プログラムが提案されているが、認知症の中核症状である失行(麻痺がないにもかかわらず生じる運動機能障害)が現れると、複雑な動作を伴うプログラムでは、それに参加すること自体が難しくなってくる。一方でリズミカルな運動は、認知症が進行してからでも比較的行いやすいとされている。

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 宮﨑氏らは、複数の人が集まりドラムを叩くという行為が、リズムを感じとって他人を模倣し、自分が何をすべきかの理解の助けになる点に着目。また、ドラムはスティックが跳ね上がるために少ない力で叩くことができ、筋肉が衰えていても無理なく楽しめることから、ドラム叩きを利用した認知症改善プログラムを作成しその効果を検討した。

 特別養護老人ホームの居住者46人を無作為に、プログラム介入群27人、非介入群(対照群)19人に分け、介入群は週に3回、1回30分、12週間にわたり、ドラムインストラクターとともにドラム叩きをしてもらい、対照群は普段どおりに過ごしてもらった。ドラム叩きは必ずしも演奏を目的としたものではなく、即興性を重視して自由にリズムを楽しむ機会とした。なお、介入群の84.78%は車椅子を使用しており、ドラムに両手が届かないため、利き手だけで叩くか、車椅子のテーブルに置いた軽量のフレームドラムを叩いてもらった。

 介入前の認知機能は、MMSEという指標(30点満点)が介入群12.93±6.64点、対照群12.89±6.89点、FABという指標(18点満点)では同順に6.37±3.12点、6.21±3.75点で、いずれも同等だった。また、上肢運動機能(関節可動域)やBMI、骨格筋量指数(SMI)も有意差がなかった。

 12週間の介入期間中のドラム活動への参加率が60%に満たなかった人などを除き、介入群22人、対照群17人を評価対象とした。その結果、MMSEは介入群が2.05点上昇したのに対し、対照群は3.24点低下(P=0.004)、FABも同順に2.36点上昇、0.35点低下して(P=0.043)、ドラム介入による認知機能への有意な効果が明らかにされた。

 上肢の関節可動域は、肩屈曲が介入群で6.14°増加したのに対し、対照群は5.88°減少(P=0.040)、掌屈が同順に10.91°増加、1.47°減少(P=0.000)し、有意差が認められた。肘屈曲や肘伸展、背屈には有意差がなかった。また、体重やBMIの変化には群間差がなかったが、インピーダンス法により評価した全身のタンパク質量、SMI、利き腕の筋肉量は介入群で低下し、群間に有意差が認められた。なお、うつ症状の主観的スコアには群間差がなかった。

 この結果から研究グループは、「認知症の人でもドラムを叩くことで認知機能が改善し、上肢の運動機能の一部が向上することが明らかになった。要介護度の高い高齢者や認知症の人の認知機能と身体機能の維持・改善ツールとして、このプログラムの利用が期待される」とまとめている。なお、介入群で筋組成の一部にマイナスの影響が認められたことに関連し、「筋タンパク合成を維持するための適切なアミノ酸摂取が推奨される」と付け加えている。

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HealthDay News 2020年8月11日
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