認知症予防には「良好な睡眠」を含めた複合的な対策が必要――新オレンジプランのデータを解析

健康な日本人を1年半追跡した研究から、気持ちの持ち方(気分)や睡眠習慣が認知機能の変化と関連しており、認知症予防には多因子に対する複合的な対策が必要であることがわかった。国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンターの松田博史氏らの研究グループが報告した。研究の詳細は「Alzheimer’s & Dementia(New York)」8月2日オンライン版に掲載された。
この研究は、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の統合レジストリである「IROOP」(Integrated registry of orange plan)のデータを解析したもの。認知症のリスク因子に関する研究手法はこれまで横断研究や短期間の観察研究が多かったが、本研究では18カ月という比較的長期間にわたる影響を縦断的に検討した。

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研究の対象は、テレビ・新聞などで募集されIROOPに登録された者のうち、ベースライン時とその後に1回以上、軽度認知機能障害に関するテストと生活習慣に関するアンケートに回答した40歳以上の健康な日本人473人(平均年齢59.6±10.1歳、男性175人、女性298人)。認知症患者や精神疾患の既往歴がある人は除外した。
アンケートは米国のレジストリ(Brain Health Registry)で使われている質問票を基に作成し、約220の質問項目で構成。「自分の人生に満足しているか?」といった気分に関する質問、「1年前と比較して今の健康状態をどう評価するか?」といったQOLに関する質問、「過去1カ月間、通常何時に就寝したか?」といった睡眠に関する質問などを設定した。
統計解析の結果、18カ月での認知機能の変化と関連する因子として、ベースラインの認知機能、テレビの視聴時間、慢性痛、電話をする友人の存在、人生への満足度など、計18項目が特定された。特に睡眠に関する項目として、就寝時刻、起床時刻、昼寝の時間という3項目が抽出され、良好な睡眠が認知機能の維持に有益であることが示された。また気分と認知症の関連については、既にIROOPの横断研究でもその関連性が示されているが、今回の研究で縦断的な変化にも影響を及ぼすことが確認された。
これらの新たな知見から、本論文では「この研究で特定された潜在的なリスク因子を、個人が日常生活でそれらを意識できるように広く公表されるべき」と述べ、また「認知症の原因が他因子にわたることを考慮すると、生活習慣に関わる要因のみに焦点を当てるのではなく、複数の要因をカバーする複合的な予防戦略が必要」と結論している。

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