糖尿病患者のHbA1c変動性が、がん発症リスクと関連する ――聖路加国際病院グループ

 外来受診時のHbA1cの変動性が、糖尿病患者のがん発症リスクと関連するとする研究結果を、聖路加国際病院内科の小林大輝氏らのグループが報告した。研究の詳細は「Cancer Journal」7月号に掲載された。

 糖尿病患者のがん発症リスクが非糖尿病者よりも高いことが近年注目されている。例えばわが国における多目的コホート研究(JPHC Study)からは、糖尿病と診断されたことのある人が何らかのがんを罹患するリスクは、男性では1.27 倍(95%信頼区間:1.14-1.42)、女性では1.21倍(95%CI:0.99-1.47)と報告されている。しかし、糖尿病における血糖コントロールの変動性が発がんに与える影響はあまり検討されておらず、小林氏らはこの点に着目し後ろ向きコホート研究を行った。

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 対象は50歳以上の糖尿病患者2,640人。血糖変動性は、外来受診時に測定されていたすべてのHbA1c値から各個人の標準偏差(SD-HbA1c)を算出し、それを尺度として評価した。SD-HbA1cを四分位に分け、Cox回帰モデルにて、がん発症との関連を検討した。

 追跡期間中(中央値4.1年)に330人(12.5%)ががんを発症した。SD-HbA1cの第1四分位(最も血糖変動性が少ない群)と比較し、血糖変動性がより大きい群ではがん発症が多く、用量依存的な関連がみられた。具体的には、第2四分位のオッズ比が1.20(95%CI:0.88-1.65)、第3四分位で1.43(95%CI:1.02-2.00)、第4四分位2.19(95%CI:1.52-3.17)だった。一方で、HbA1cの平均値や糖尿病罹病期間は、がんの発症と有意な関連が認められなかった。補正する共変量を変更してもこれらの結果は一貫していた。

 以上から、外来受診時のHbA1cの変動性が、その後のがん発症の潜在的な危険因子であることが示された。この結果について小林氏らは、「酸化ストレスまたはホルモンの変動が関与しているのではないか」と考察。また「血糖コントロールが不安定な糖尿病患者には、日常的ながんスクリーニング検査が必要かもしれない」と述べている。

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HealthDay News 2019年8月5日
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