「傍尿細管基底膜滲出性病変」は糖尿病腎症の有用な腎予後因子 – 日本人2型糖尿病患者で検討 –


Capsular dropやfibrin capに代表される糸球体の滲出性病変は、糖尿病腎症の特徴的な病理学的所見として知られている。腎生検を用いたこれまでの研究で、糸球体や細動脈の滲出性病変は糖尿病腎症の腎予後と関連することが報告されているが、間質の線維化・尿細管萎縮(IFTA)や結節性病変ほどの強い関連は認められていない。そこで今回、研究グループは滲出性病変の中でも、糸球体尿細管極から近位尿細管を進展していくPTBMILに着目。腎生検により糖尿病腎症と確定診断された2型糖尿病患者を対象に、同病変の広がりと腎予後との関連を調べた。
対象は、1998年1月~2011年6月に虎の門病院で腎生検を施行され、糖尿病腎症と診断された2型糖尿病患者136人。腎生検時に推算糸球体濾過量(eGFR)が10mL/分/1.73m3未満だった患者は解析から除外した。患者背景は、平均年齢は61歳、男性が80%で、ベースライン時の平均eGFR値は43.9±22.8mL/分/1.73m3であり、対象患者の92%(125人)は顕性蛋白尿を呈していた。
対象患者をPTBMILの広がりの程度により軽度群(PTBMILスコア0~2、34人)と中等度群(同3および4、50人)、重度群(同5および6、52人)の3群に分けた。主要評価項目は、eGFRのベースライン時から40%以上の低下、あるいは末期腎不全による透析導入とし、Cox回帰分析によって主要評価項目とPTBMILの程度との関連を調べた。
中央値で1.8年の追跡の結果、対象患者のうち104人に主要評価項目が認められた。腎生存率には3群間で有意差がみられ、PTBMILの広がりが高度な群ほど腎生存率は有意に低下した。

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また、糖尿病の罹病期間や糖尿病網膜症、収縮期血圧、eGFR、蛋白尿量(いずれも腎生検時)といった腎予後因子で調整したCox回帰分析において、主要評価項目(eGFRの40%以上の低下または透析導入)に対するリスクはPTBMILの広がりが軽度の群に比べて、中等度群では2.32倍(ハザード比、95%信頼区間1.20~4.51)、重度群では3.12倍(同、1.48~6.58)と有意に高かった。さらに、これらの代表的な腎予後因子による多変量Cox回帰モデルに、PTBMILスコアまたは群(上記の3群)といった因子を加えると腎予後の予測能が有意に向上することも分かった。
以上の結果から、3氏らは「今回検討した進行期の糖尿病腎症患者において、PTBMILは尿細管の萎縮を伴いながら多様に広がっていることが確認できたため、IFTAの原因となり得る」と指摘しつつ、「PTBMILはこれまで知られている予後因子とは独立して腎予後と強く関連し、腎予後因子として有用な可能性が考えられる」と結論。今後、早期糖尿病腎症患者においても検証が必要だと付け加えている。

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