糖尿病患者は緑内障になりやすい?――JPHC研究

糖尿病患者は眼圧が高いことが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの日本人を対象とする研究から明らかになった。結果の詳細は「Scientific Reports」3月24日オンライン版に掲載された。
眼圧とは、眼球の内側から外側に向かう圧力(眼球の硬さ)のことで、眼球のかたちを保つためには一定の眼圧が必要。しかし、眼圧が高い状態が長く続くと視神経が障害されて、徐々に視野が狭くなる。視神経は再生しないため、一度失われた視野は回復しない。緑内障は、わが国の失明原因のトップを占めている。欧米からは、糖尿病が高眼圧症や緑内障のリスク因子であることが報告されているが、日本人を対象とした大規模な研究はこれまで行われていなかった。

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今回発表された研究の対象者は、茨城県筑西市の住民を対象に行った眼科検診受診者のうち、血液検査や眼圧のデータがあり、緑内障の既往や眼科手術歴のない6,786人。このうち734人が糖尿病を有していた。
年齢、性別、BMI、高血圧、喫煙習慣、飲酒量で調整後、糖尿病の有無で眼圧を比較すると、非糖尿病群(全体の89.2%)の13.9mmHgに対し、糖尿病群(10.8%)は14.4mmHgと有意に高値だった。また、HbA1c6.0%を基準に二分した場合も、6.0%未満の群(76.7%)は13.9mmHg、6.0%以上の群(23.3%)は14.2mmHgで有意差が認められた。血糖値の高低で二分した場合も同様に、空腹時110mg/dL未満または非空腹時140mg/dL未満の群(86.1%)は13.8mmHg、空腹時110mg/dL以上または非空腹時140mg/dL以上の群(13.9%)は14.4mmHgで有意差が認められた(全てP<0.001)。
眼圧が21mmHgを上回るものを高眼圧症と定義すると、非糖尿病群の1.9%、糖尿病群の3.1%が高眼圧症に該当し、糖尿病群で有意に多く見られた(P=0.01)。年齢ほか前記の因子で調整の上、糖尿病の有無やHbA1cおよび血糖値の高低で高眼圧症の頻度を比較すると、糖尿病がある場合に高眼圧症であるオッズ比(OR)は1.75、HbA1c6%以上ではOR1.47、空腹時110mg/dL以上または非空腹時140mg/dL以上ではOR1.80と、いずれも有病率が有意に高いことが分かった(全てP<0.05)。
なお、糖尿病患者では一般に角膜が厚いことが知られている。それが眼圧に影響を及ぼす可能性もあるため、角膜の厚さを調整因子に追加して検討したが、結果はほぼ同様だった。
以上より、研究グループでは「欧米のメタアナリシスと同様に、日本人でも糖尿病や高HbA1c、高血糖では高眼圧症の有病率が高いことが分かった。角膜の厚さを調整してもこの関連を認めたことから、角膜の厚さに関わらず、血糖値が高いことで眼圧が上昇する可能性が示唆される」とまとめている。高血糖で高眼圧になる機序については「因果関係を明らかにするには前向きコホート研究が必要」と述べた上で、「血糖値が高いことで、眼の中を循環する水の出口が詰まりやすくなり、眼圧が上がる可能性が考えられる」としている。
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