ストレスで炎症性腸疾患の病状が変わる患者、変わらない患者の差異

炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)の病状と、精神的ストレスの関係を詳細に検討した結果が報告された。精神的ストレスによって自覚症状が悪化すると感じている患者では、実際にストレスの強さと病状の間に相関が見られたという。大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学の飯島英樹氏らが「PLOS ONE」5月26日オンライン版に報告した。

 炎症性腸疾患の原因はまだ分かっていないが、複数の因子が関与しており、その一つとして精神的ストレスの影響もあるとされる。また多くの場合、発症後に症状の改善と悪化(疾患活動性)を繰り返すことが炎症性腸疾患の特徴の一つだが、そのような疾患活動性にも精神的ストレスが関与することが知られている。飯島氏らは、炎症性腸疾患の疾患活動性に及ぼす精神的ストレスの影響、および不眠症との関連を、多施設共同研究で調査した。

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 研究対象は、国内20カ所の医療機関で登録された1,078人(クローン病303人と潰瘍性大腸炎775人)。クローン病患者は平均年齢42歳、発症年齢24歳、女性27.7%、疾患活動性を表すCDAIスコアは80.6、抑うつの程度を表すCES-Dスコアは6であり、潰瘍性大腸炎患者は平均年齢48歳、発症年齢36歳、女性47.9%、疾患活動性を表す部分Mayoスコアは1、CES-Dスコアは5だった。

 まず、アンケート調査の結果から、患者自身が症状の悪化に精神的ストレスが影響すると考えているか否かを見ると、75.1%の患者が「影響がある」と回答した。クローン病(75.0%)と潰瘍性大腸炎(75.2%)とで、その割合は同等だった。多変量解析により、女性は男性より、精神的ストレスが症状に影響すると感じる患者が多い傾向が見られた(オッズ比1.52、P=0.021)。

 クローン病患者のCDAIスコア150以上、潰瘍性大腸炎患者の部分Mayoスコア2以上を「疾患活動性あり」と定義し、その有無で2群に分け、抑うつの程度(CES-Dスコア)を比較した。その結果、精神的ストレスが症状に影響すると感じている患者では、疾患活動性のある群とない群でCES-Dスコアに有意差が認められた(P<0.0001)。一方、精神的ストレスの症状への影響を感じていない患者では、疾患活動性の有無で分けた群間のCES-Dスコアに有意差がなかった(P=0.78)。また、精神的ストレスが症状に影響すると感じている患者では、CES-Dスコアと疾患活動性が正相関したが(クローン病:r=0.26、P=0.0004。潰瘍性大腸炎:r=0.21、P=0.0007)、精神的ストレスの症状への影響を感じていない患者では有意な相関がなかった。

 次に、不眠症症状をリッカートスコア(全く問題ないが1点、非常に問題が5点)3点以上で「不眠症あり」と判定すると、22.3%が不眠症に該当した。クローン病(25.7%)と潰瘍性大腸炎(21.0%)とで、その割合は同等だった。不眠症群における疾患活動性のある患者の割合(43.7%)は、不眠症のない群でのその割合(26.8%)より有意に高かった(P<0.001)。

 続いて、患者自身が精神的ストレスの症状への影響を感じているかいないかで、疾患活動性の有無と不眠症の有無の関連を検討。その結果、精神的ストレスの症状への影響を感じている患者において、不眠症のある患者の割合は、疾患活動性のある群(38.8%)の方が疾患活動性のない群(22.8%)より有意に高かった(P<0.001)。しかし、精神的ストレスの症状への影響を感じていない患者においては、不眠症のある患者の割合が同順に26.6%、18.7%であり、有意差が認められなかった(P=0.2030)。

 これらを踏まえ研究グループでは、「精神的ストレスが症状の悪化を引き起こすと感じている炎症性腸疾患患者では、実際に疾患活動性が精神状態と相関することが明らかになった。疾患の経過と環境要因の関連のメカニズム解明には今後の研究が必要だが、本研究の結果は個々の患者の精神的ストレスに基づくオーダーメード治療の開発につながる」とまとめている。

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クローン病はお腹の痛みや下痢などを主症状とする病気です。慢性の病気であり、クローン病のタイプや合併症の有無などによって体のさまざまな部分に症状が現れます。クローン病の特徴や自覚症状について触れながら、クローン病のセルフチェック方法についてみていきます。

この症状はクローン病かも?そう思ったときのセルフチェック方法

参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年6月15日
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