食洗機の庫内は思ったより不衛生?


ただ、屋内環境の微生物に詳しい専門家は「細菌やウイルス、真菌といった微生物はヒトの体内や体表をはじめあらゆる場所に存在しており、食洗機が原因で病気になる心配はほとんどない」としている。
この研究はリュブリャナ大学(スロベニア)生物学教授のNina Gunde-Cimerman氏らが実施したもの。
同氏らは家庭用食洗機にどのような細菌や真菌が生息しているのか、またその構成にはどのような因子が影響しているのかについて検討するため、一般家庭で使用されている食洗機24台のゴムパッキン部分に付着したバイオフィルム(微生物の集合体)を採取して調べた。
その結果、全体的に最も高頻度でみられた細菌はアシネトバクター属、大腸菌属、シュードモナス属の細菌だった。また、カンジダ属やクリプトコッカス属、ロドトルラ属の真菌も見つかった。
いずれも通常は無害だが、免疫力が低下した人では日和見感染症を引き起こす場合があるという。

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Gunde-Cimerman氏は「台所用品に微生物がいてもほとんどは安全」としているが、その一方で「免疫力が低下した患者の真菌症の原因菌として知られるエキソフィアラ・デルマチチヂスという真菌は、自然界ではあまりみられないが食洗機では簡単に見つかる。
このため、免疫力が低下した患者の一部にみられる真菌症には食洗機が関与している疑いがある」と指摘。
ただ、実際にそうした関連が裏付けられているわけではなく、「推測のレベルにすぎない」としている。
では、これらの微生物はどこから食洗機の庫内に入ってくるのだろうか。Gunde-Cimerman氏によると、真菌は主に水道水から、細菌ははっきりとはしていないが汚染された食物から入ってくると推測されるという。
なお、食洗機の微生物が排水や湯気とともに拡散する可能性もあるため、運転後は庫内が冷めるまで扉を開けない方が良いと同氏は助言している。
また、「使用後にゴムパッキン部を乾いた布で拭くことも拡散防止に有効だ」としている。
一方、屋内環境の微生物に詳しい米ノースウェスタン大学助教授のErica Hartmann氏は「食洗機は微生物にとって極限の環境である点が興味深い」と話す。
食洗機の庫内は湿度、温度、酸性度などが絶えず変動し、洗剤と食べかすが混在する特殊な環境であるため、特定の微生物だけが繁殖できるという。
ただ、同氏も食洗機が原因で病気になるリスクについては「おそらくサメに襲われる確率と同じくらい低い」としている。
また、同氏はこれまでに微生物の研究を通じてさまざまな科学技術が開発されたことに言及し、「微生物にはポジティブな面もある」と強調。
「もし自宅の台所の微生物を調べる研究に協力を求められたら、前向きに検討すべきだ。台所から素晴らしい微生物が見つかるかもしれない」と話している。

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