子ども手当は子どもを幸せにしているか?――医科歯科大

 子どもの貧困は世界各国で深刻化しており、わが国でも約7人に1人に当たる13.5%の子どもが貧困に該当し、その割合はOECD加盟国の平均より高いことが指摘されている。そのような格差を縮小することを目的に、養育世帯への児童手当(子ども手当)が社会的サポートの一つとして運用されている。しかし、子ども手当が実際に子どもの健康や保護者の行動にプラスになっているかどうかは、これまで明らかになっていなかった。この点にスポットを当てた東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏、研究室所属大学院生の小山佑奈氏らの研究結果が、「BMC Public Health」に10月6日掲載された。

 小山氏らはこの研究に、2016年に高知県で実施された「高知県子どもの生活実態調査」のデータを用いた。同調査は、高知県内の通信教育学校と特別支援学校1校を除く全ての公立・私立の小学1年生、5年生、中学2年生の生徒と保護者を対象に、子どもたちの生活環境と健康状態を把握するために実施された横断調査。

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 保護者には、子ども手当受給の有無、子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire;SDQ)、子どもの体重と身長(BMI)、子どもに対する投資に関する質問などに回答してもらった。抑うつ症状(Depression Self-Rating Scale;DSRS)と主観的健康観(Self-rated health;SRH)は、子ども自らに評価してもらった。

 全調査対象8,207組の親子のうち、子ども手当を受給していないのは219組(2.7%)だった。子ども手当を受給していない世帯は受給世帯に比べて、県都(高知市)に居住している割合が高く、世帯収入や学校以外にかける教育費が高いという有意差が見られた。また、両親ともに高齢で教育歴が長く、喫煙率や精神的苦痛レベルは低いという点にも有意差が認められた。

 保護者の年齢や世帯人員・収入、居住地域、労働時間、心理的苦痛(K6スコア)、および子どもの性別や学年などの潜在的な交絡因子を傾向スコアマッチングにより調整して、背景因子の一致した各群217組を抽出。子ども手当受給の有無と、子どもの健康状態や問題行動のレベルとを比較した。

 その結果、保護者が報告した子どもの問題行動(SDQの総合的困難さスコア)は、子ども手当受給世帯の方が有意に少なく、その差は1.29点(95%信頼区間−2.32~−0.25)だった。また、過体重(BMIが+1標準偏差以上)の割合は、オッズ比0.51(95%信頼区間0.29~0.91)で受給世帯の子どもの方が低かった。

 その他、低体重の割合、SDQの向社会的な行動スコア、抑うつ症状のスコア、主観的健康観には、有意差が見られなかった。学校以外にかける教育費や、家族行事の有無、親子の関わりも、傾向スコアマッチング後は有意差が見られなかった。

 これらの結果から著者らは、「子ども手当は、子どもの問題行動や肥満のリスクを減らす可能性があることが示唆された。今後、縦断調査などにより子ども手当の影響を詳細に検討し、子どもの健康との関係のメカニズムを明らかにする必要がある」とまとめている。

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HealthDay News 2020年11月2日
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