飲酒×喫煙で高血圧リスクが相乗的に上昇――日本人男性での縦断研究

お酒とタバコというリスクが重なると、高血圧をより発症しやすくなる可能性が、日本人男性従業員の健康診断結果を縦断的に解析した研究から明らかになった。千葉大学大学院医学研究院環境労働衛生学の諏訪園靖氏らの研究グループによる研究結果が11月10日、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に報告された。
この研究の背景として、これまでの研究から、飲酒量が多いほど血圧が高くなりやすいという量反応関係が明らかになっていること、喫煙に関しては、心血管疾患の強力なリスク因子であることは疑いないものの、喫煙本数と血圧との量反応関係は十分明らかになっていないこと、また、高血圧発症に対する飲酒と喫煙の相乗的効果も明確にされていなかったことが挙げられる。

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研究対象者は、2002年度以降の健康診断を受診した男性製造業従業員7,511人で、2010年まで8年間にわたり追跡し、高血圧の新規発症を調査した。高血圧の発症は、血圧140/90mmHg以上、または降圧薬の開始とした。飲酒量については、「飲まない」と、エタノール換算値で1~76g/週、77~153g/週、154~307g/週、308g/週以上の5群に分類した。なお、エタノール77gは日本酒3.5合、154gは7合、308gは14合に相当する。喫煙については、「吸わない」と、1~10本/日、11~20本/日、21本/日以上という4群に分類した。
対象者の平均年齢は41.3歳で、飲酒量は平均110g/週(5.0合/週)、喫煙率は57.9%だった。追跡期間中に、2,351人(31.3%)が高血圧を発症した。年齢、BMI、HbA1c、総コレステロール、AST、尿酸、クレアチニン、運動習慣、シフトワークの有無の影響を補正後、飲酒量、喫煙本数と高血圧発症との量反応関係が認められた。
飲酒に関しては「飲まない」群に対して、77~153g/週でオッズ比(OR)1.18(95%信頼区間1.02~1.35)、154~307g/週でOR1.41(同1.24~1.61)であり、308g/週以上ではOR1.78(1.56~2.02)と約1.8倍のリスクの上昇が認められた。喫煙に関しては「吸わない」人に対して、11~20本/日でOR1.12(1.01~1.25)、21本/日以上ではOR1.17(1.03~1.32)と上昇していた。
次に、飲酒と喫煙が重複した場合の影響を検討した。その結果、飲酒しない、または飲酒量が153g/週以下の場合は、喫煙の有、無ともに、高血圧発症リスクの有意な上昇は見られなかった。ところが、飲酒量が154g/週以上の場合は、非喫煙者で1.51(1.27~1.79)と有意なオッズ比の上昇が認められ、さらに喫煙者の場合は1.81(1.54~2.11)と、オッズ比がより上昇しており、相乗的にリスクが高まる可能性が示された。
著者らは本研究の限界点として、禁煙者のリスクを評価していないこと、飲酒量や喫煙は健診時のもので長期的な状況を考慮していないことなどを挙げている。その上で、「飲酒および喫煙と高血圧発症との間に有意な正の量反応関係が認められた。さらに、飲酒と喫煙は高血圧発症に対して相乗的にリスクを増加させる可能性が示された。飲酒量を減らして禁煙することで、高血圧発症リスクをさらに抑制できるのではないか」と結論付けている。

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