外食しやすい生活環境で肥満リスクが高まる? 宮城県在住の高齢者データを分析

2011年3月の東日本大震災では、多くの被災者が家屋を失い、仮設住宅への転居を余儀なくされた。転居後には近隣の生活環境も大きく変化することが多いが、自宅と飲食店や食料品店との距離が縮まって外食しやすい環境になると、高齢者の肥満リスクが高まる可能性があることが、香港大学公衆衛生大学院の引地博之氏らが実施した調査で明らかになった。詳細は「Scientific Reports」1月23日オンライン版に掲載された。
引地氏らは、仮設住宅などに転居した場合には、近隣の生活環境、特に飲食店や食料品店への交通の便が大きく変化する点に着目。震災後の食環境の変化が体重に及ぼす影響について検討するため、宮城県岩沼市の住民を対象に調査を実施した。

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研究では、日本老年学的評価研究プロジェクト(JAGES)の一環で、同県岩沼市に在住する高齢者を対象に実施した社会調査から、東日本大震災の7カ月前(2010年8月)と震災発生から2年半後(2013年10月)のデータを分析した。震災前には適正体重(BMI 18.5~22.9)だったが、震災後にBMI 25以上の肥満となった人に注目し、いずれの調査にも回答した3,567人を対象に、BMIの変化と自宅から飲食店や食料品店までの最短距離の差(震災前後)との関連を調べた。
その結果、自宅と居酒屋やファストフード店、食料品店との最短距離が1km縮まると、高齢者は適正体重から肥満になるリスクが高いことが分かった(オッズ比はそれぞれ、居酒屋では1.46、ファストフード店では1.44、食料品店では1.46)。
こうした結果が得られた背景について、引地氏らは「岩沼市の仮設住宅は市の中心部に建設され、沿岸部から転居した住民は居酒屋やファストフード店などを使いやすくなった。そのため、外食の機会が増えたことで体重増加につながったのではないか」と考察している。
引地氏らによれば、大震災で被災した高齢者の肥満度を食環境の変化に着目して検証した研究はこれまでなかった。この研究結果を踏まえれば、外食や買い物が不便な地域に仮設住宅を建設した自治体では、飲食店やスーパーマーケットへのアクセスが大幅に悪化したことが原因で、体重が減少した高齢者が増えている可能性が危惧されるという。同氏らは「大災害後に被災者の仮設住宅を準備する際には、住宅だけでなく、近隣の食環境も考慮することが住民の健康を維持する上で重要ではないか」との見方を示している。

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