致死性の高い人食いバクテリアとは

人食いバクテリアについて

はじめに
聞いただけでも、恐ろしい人食いバクテリア。
知らないと本当に恐ろしい症状になってしまうかも。
そんな不安なあなたに人食いバクテリアについてご説明していきます。
人食いバクテリアは溶血性連鎖球菌(溶連菌)の1種です。
その中でも劇症型といって、とても早く重い症状を見せる溶血性連鎖球菌感染症の起因菌です。
溶連菌の中でもA群β溶血性連鎖球菌の人に対する病原性は、感染時の発熱が軽度であることが多かったことから抗生物質での管理も必要ないと考えられてきました。
しかしながら、溶連菌感染症に敗血性ショック症状を生じるものが1980年代から欧米で報告され始めたことから注意が喚起されています。
これを劇症型A群溶連菌感染症といいます。
起因菌を人食いバクテリアという未解の生態を有する溶連菌としています。
劇症型溶連菌感染症は、進行の早い感染症です。
速やかに処置しなければ四肢から壊死が始まり、全身に広がるために手足の切断も必要になります。
人食いバクテリアは溶連菌だけではなく、多くの菌の一部にも含んでおり(クロストリジウム属細菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌やビブリオ属細菌)壊死性筋膜炎のような敗血症を伴って急速に致命的な状態を引き起こす細菌のことを示しています。
今回は劇症型溶血性レンサ球菌感染症に焦点を当ててご説明します。

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人食いバクテリアとは
人食いバクテリアとは溶連菌の一種です。
風邪のような症状から発症しますが、急激に症状が進行することから恐れられています。
急速に体に広がり、細胞を破壊します。
内臓だけでなく、筋肉や皮膚の組織まで症状が及び壊死を引き起こします。
そんなことから重篤な疾患の起因菌とされています。
溶連菌は病原性が菌株ごとに多岐にわたっており、複数の血清型が分離されています。
※現在ではランスフィールド抗原分類法を用いて、菌体表層分子のMタンパク質の構造で分類しており、100種類以上のMタンパク質が知られています。
また溶連菌感染症は学校保健安全法に定められる感染症です。
適切な治療が開始されてから24時間以内は登校することができません。
風邪の症状のみにとどまらず劇症化すると最悪の場合は死に至ることもあります。
人食いバクテリア感染症の感染経路と病原因子
化膿性レンサ球菌のような劇症型の溶連菌は、健康なヒトの咽頭、消化器官、皮膚に常在しています。
非劇症型の溶連菌は飛沫感染で上気道に感染します。
場合によっては経口感染もすることがあるので手洗いうがいは積極的に行いましょう。
※溶血性連鎖球菌の学名はStreptococcus pyogens でクロストリジウム属細菌に代表されるFirmicutesというグループ(門)に属します。
グラム陽性の無芽胞通性嫌気性菌である溶連菌は、血液寒天培地上で培養するとβ溶血性を示し、ランスフィールド抗原分類ではA群に属することから、A群β溶血性連鎖球菌(Group A Streptococci, GAS)レンサ球菌と表現することもあります。
ランスフィールド抗原分類は、溶連菌のMタンパク質の構造で血清型を区別する方法で、呼吸器と皮膚症状を惹起する血清型は異なっています。
溶連菌が悪さをする病原因子には2種類あります。
それが、菌体表層分子と酵素です。
表層分子と言われるMタンパク質が人の角質細胞に接着されることで悪さをします。
またMタンパク質の構造の違いによって、溶連菌の血清型を決めています。
人食いバクテリアに特異的な病原因子や、なぜ劇症化するか?について今はわかっていません。
人食いバクテリア感染症の症状
劇症型溶血性連鎖球である人食いバクテリアの感染は、免疫不全のような基礎疾患を持っていないヒトを対象にすることが特徴です。
非劇症型の溶連菌感染症の初期症状は、呼吸器症状と発熱であるのに対して、
人食いバクテリア感染症の初期症状は、四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下です。
進行が早く、10時間以内に軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候が見られます。
中でも組織の軟化が急激に進む壊死性筋膜炎は溶連菌感染症の重症例です。
壊死性筋膜炎は皮膚よりも深い筋膜に広がる感染症で、典型的な例では手や足の指先が1時間に数センチもの速さで壊死していきます。壊死に加えて、高熱、局所の腫脹も主症状です。
また死亡率が30%以上と極めて高いのも特徴です。
壊死性筋膜炎は人食いバクテリアの他にもクロストリジウム属細菌の一部や大腸菌、黄色ブドウ球菌も原因となります。
発症リスクは、外傷や熱傷、水痘など皮膚障害を有する時に高まります。

非劇症型の溶連菌感染症の特徴的な症状である急性扁桃炎は、扁桃腺に感染した化膿性レンサ球菌によって発熱や咽頭痛を生じます。
人食いバクテリア感染症の予防と治療法
溶連菌は常在菌であるために、完全な感染対策は困難です。
特に流行時には予防に注力しましょう。
溶連菌感染症のピークは冬だけではなく、初夏と冬の一年に2回です。
現在のところ溶連菌ワクチンは存在しないので、手洗いやうがいとマスクの着用が予防になります。
家庭では溶連菌での汚染が疑わしい食品や水、タオルの共有を控えることが必要です。
溶連菌感染症の治療はペニシリン系の抗生物質で行います。
壊死性筋膜炎の治療は、切除(デブリードマン)と集中管理のもとでの抗生物質投与です。
デブリードマンとはフランス語で切開という意味で、感染部位を除去して洗浄する処置のことです。周囲の正常な組織の最長を妨げるため、現在でも切除が原則となっています。
また壊死性筋膜炎の発症は既に敗血症に至っていると考えられます。
※合併症として播種性血管内凝固症候群にも対応するために、抗生物質ペニシリンとクリンダマイシンを大量静注します。
切除は壊死を起こしている部分からの感染拡大を防ぎます。
重症化を防ぐためにも早期治療が重要です。

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まとめ
人食いバクテリアの怖さを知っていただけたでしょうか?
どこにでもいるような常在菌である溶連菌感染から、劇症化してしまうことがわかっていただけたと思います。
どのような場合に劇症化が起こるのかは解明されていないところもあり謎が多いです。
しかしながら、咳やくしゃみで感染したり、手で触ってしまった菌が経口感染する場合もあることから日頃の基本的な手洗い、うがいが重要になります。
ちょっとした風邪でも油断は禁物です。
また、傷口に熱を持つような状態も良くないので覚えておきましょう。
人食いバクテリアと呼ばれる菌の感染症状は一刻を争うので、早めの受診を心がけましょう。

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