致死率50%以上! エボラウイルスの怖さとは

エボラウイルスについて

はじめに
2014年に西アフリカで流行したエボラ出血熱。世界保健機関(WHO)は、2015年までに感染者は28,512名に上り、その40%もの11,313名が死亡していると報告しています。
エボラ出血熱はエボラウイルス感染症の中でも、一類感染症に分類されている重要な感染症で、死亡率は40%にまで達します。
今回の流行については2016年に終息を宣言していますが、感染対策が一刻も早く望まれます。
これを受けて日本の外務省はエボラウイルス感染症に関する情報提供に注力したり、ギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航に注意喚起しています。

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エボラウイルスとは
エボラウイルスは、フィロウイルス科エボラウイルス属で、アフリカのエボラ川から命名されています。
ヒトに感染してエボラ出血熱に至った場合の致死率は50%を超えます。
また、一命を取り留めた場合でも、重い後遺症を残すことがわかっています。
エボラウイルスのような病原性微生物は、危険性に応じて4段階のリスクグループに分類されます。中でも、エボラウイルスの属するグループ4は、ヒトあるいは動物の生死にかかわる重篤な病気を起こし、簡単にヒトからヒトへ感染します。
現段階では、有効な治療法や予防法は確立されていません。
また、リスクグループ4のウイルスには、エボラウイルス以外にマールブルグウイルス、天然痘ウイルスがあります。
感染症の症状
エボラウイルスの潜伏期間は7日間程度です。潜伏期間中に感染力はなく、発病後に感染します。
発熱、のどの痛み、下痢などが突然現れ、進行すると口腔や消化器官を中心に全身に出血が見られます。これをエボラ出血熱といいます。
感染症の集団発生では、致死率が90%以上に達することもある恐ろしい感染症です。
感染症の原因と感染経路
エボラウイルスの感染は、発症者の体液や体液に汚染されたもの、排泄物、感染死者の遺体などから起こります。
ヒト以外では、サル、コウモリ、ブタに感染して寄生します。
アフリカではそれらの野生動物を食べる習慣があり、感染と流行の原因となっています。
また、WHOは、医療従事者、患者の家族・近親者や遺体に触れる機会のある人を高リスク者としています。
接触による感染力は強いですが、空気感染や症状のない人からの感染はなく、直接触らなければ簡単にヒトからヒトへ移りません。
感染者への対応
エボラウイルスは日本国内での発生リスクは低いとされています。とはいえ、発生の可能性がゼロではないため、発見されたときの対応を整備しています。
医療機関から感染の報告があると、国立感染症研究所で検査を行います。感染が確認された場合は、感染症指定医療機関に移され、隔離病棟で適切な医療を公費で受けられます。
感染症医療機関には特定感染症指定医療機関と、第一種感染症指定医療機関があります。
前者は、成田赤十字病院、独立行政法人国立国際医療研究センター、常滑市民病院、市立泉佐野病院で、後者には49の医療機関が含まれます。
医療機関がない県は青森、秋田、宮城、石川、香川、愛媛、大分、宮崎、鹿児島県です。
これらの県で感染した患者は県外の施設か、第二種感染症指定医療機関に受け入れられます。

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感染症の予防と治療
ウイルスを粘膜や傷口から入れないようにすることで予防できます。

咳は症状に含まれませんが、飛沫は避けるべき感染源の1つなので、1メートル以内での長期間の接触は控えます。
また、人ごみを避け、マスクをすることも大切です。
エボラウイルス感染症に対する有効なワクチンや特効薬は、残念ながらまだ存在しません。
症状を軽減するための治療を行い、脱水や痛みを抑えるほか、抗凝固因子によって播種性血管内凝固症候群を回避するのが現状で、新規治療法や動物実験レベルでのワクチンの開発が検討されています。
※播種性血管内凝固症候群とは
本来出血した箇所で起こる血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こる症候群のこと。
一方で、エボラウイルス感染症患者の血清投与も有効な治療法として注目されています。
1995年のコンゴでの症例において、回復した患者の血液を8人の患者に輸血し、7人が回復したとされています。
2014年の流行のときも、WHOは抗体療法を「早急に試すように」と奨励しています。
2010年にはアメリカの研究者によって、エボラ出血熱に感染したアカゲザルに対しての有効な核酸医療が国際上級誌で発表されました。
※核酸医療とは
DNAやRNAの構成成分である核酸を使って、遺伝子の発現に直接作用することにより、これまで難しかった病気の治療をすること。
また、既存の抗ウイルス薬を用いた治療も注目されています。抗HIV薬のラミブジンや抗マラリア薬のアーテスネート・アモジアキンで、エボラ出血熱の死亡率が低下するともいわれています。
おわりに
エボラウイルス感染症についておわかりいただけたでしょうか?
治療法に関してまだまだ課題は山積みですが、今後の医療の進歩に大いに期待できそうです。
恐ろしいと思うだけでなく、正しい知識をもって予防しましょう。

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