EDと頻尿はどちらが先に現れる?――日本人男性の縦断的調査

 男性は年齢とともに頻尿などの尿路症状や勃起障害(ED)が増える。では、尿路症状とEDのどちらが先に現れることが多いのだろうか? 札幌医科大学医学部泌尿器科の小林皇氏らが、日本人男性を14年以上追跡した研究から、その答えが明らかになった。研究の詳細は、「Sexual Medicine」に2月1日掲載された。

 小林氏らの研究は、北海道島牧村の住民を対象とする縦断的な研究。1992年に同村の40~79歳の男性682人のうち319人(47%)を対象に、尿路症状〔国際前立腺症状スコア(IPSS)で評価〕やEDの有無などを調査。そのうち185人が2007年に同村に居住しており、うち135人(73%)が追跡調査に参加した。排尿や性機能に影響を与える疾患の既往がある人などを除外し、108人を解析対象とした。

EDに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

 なお、ED症状は日本版の自記式質問票で判定した。これは、陰茎が完全に硬くなる場合を6点、全く硬くならない場合を1点とする評価法。本研究では、3点(硬くはなるが性交には十分でない)以下をEDと定義した。

 ベースライン時(1992年時点)における参加者の年齢は中央値57歳で、追跡期間は同14.4年だった。この間に、尿路症状(IPSSの中央値)は7点から9点に上昇(P=0.01)、前立腺容積は17.7mLから24.3mLに増加(P<0.01)、EDスコア(中央値)は5点から2点へと低下し(P<0.01)、全て有意に変化していた。また、ベースライン時には、尿路症状もEDもない男性が42.6%(46人)を占めていたが、追跡調査では尿路症状とEDがともにある男性が43.5%(47人)を占めていた。

 追跡調査で尿路症状とEDを併発していた47人について、ベースライン時の状態を遡って調べた結果、両方の症状がなかった人が19.1%、両方とも症状のあった人が34.0%であり、尿路症状のみだった人が34.0%、EDのみだった人が12.8%だった。つまり、EDよりも尿路症状が先に現れていた人が2.6倍以上多かった。また、尿路症状の中でも生活の質(QOL)の低下につながりやすい夜間頻尿とEDの発症順序も、同様の前後関係にあることが確認された。

 EDより先に尿路症状が現れやすいことが明らかになったことから、次に、統計解析によりEDの発症予測因子の特定を試みた。年齢(60歳以上)、IPSSの合計スコア、夜間頻尿(トイレのための睡眠中断が2回以上)、前立腺容積、およびQOL指数を説明変数とする多変量解析の結果、年齢〔オッズ比(OR)7.10、95%信頼区間2.09~24.13〕と夜間頻尿(OR15.83、同3.05~82.15)が有意な予測因子として抽出された。

 著者らは本研究の限界点として、解析対象者数が十分ではないこと、縦断的な研究デザインではあるが2時点のみの評価であること、尿路症状やEDに影響を及ぼすBMIや男性ホルモンの値が考慮されていないことを挙げている。その上で、「EDよりも尿路症状、特に夜間頻尿の先行が多いことが明らかになった」と結論付けている。

 なお、EDに先行し尿路症状が現れやすいことの理由については、「明らかでない」としながらも、加齢に伴う膀胱と前立腺の血流障害が尿路症状の背後にあり、血流障害がより顕著になるとEDを発症するのではないかと考察している。EDは近年、心血管疾患の予測因子としても注目されていることから、尿路症状への介入がEDの予防、さらには心血管疾患のリスク低下につながるのか、今後の研究が期待される。

治験に関する詳しい解説はこちら

治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

治験・臨床試験についての詳しい説明

参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年3月15日
Copyright c 2021 HealthDay. All rights reserved.
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
記載記事の無断転用は禁じます。