「電解水」を用いた血液透析システムで心血管合併症リスクが低減 臨床研究で効果と安全性を検証、東北大グループ

東北大学大学院附属創成応用医学研究センター特任教授の中山昌明氏らの研究グループは、水の電気分解によって生成される「電解水」を用いた新しい血液透析システムにより、通常の血液透析療法と比べて血液透析患者の全死亡と心血管合併症の複合エンドポイントの発症リスクを低減できたとする臨床研究の結果を「Scientific Reports」1月10日オンライン版に発表した。

新しい透析治療を利用することで血液透析患者の心血管合併症が抑制され、患者の生存期間の延長と社会復帰を後押しするほか、医療費の抑制にも寄与する可能性があるとしている。

日本国内の慢性透析患者数は2015年末の時点で32万人に達し、今後も増加が見込まれている。
一般の人と比べて透析患者の予後は不良で、特に心機能の低下による心不全や動脈硬化が進行して脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まるため、心血管合併症が死因のトップとなっている。
研究グループによると、心血管合併症の原因には透析中に生じる生体内の酸化ストレスと炎症が関与する可能性が示唆されているが、これらを抑制する手段は現時点では見出されていないという。

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こうした現状を鑑み、研究グループは水の電気分解によって生成される「電解水」が生体内で酸化ストレスを抑える働きに着目。
透析治療への電解水の応用を目指して2006年から株式会社日本トリムと共同研究を開始し、電解水を用いた血液透析システムを開発した。

その仕組みは、水道水を活性炭濾過し、軟水化した後に電気分解装置を通して陰極側に生成された水素分子を含む水を逆浸透圧装置に導入して、溶存水素が豊富(30~100ppb含有)な血液透析液を作製する。
この溶存水素は、人工腎臓を介してシャント血に移動して呼気中から排泄される(透析中の溶存水素の平均呼気中濃度は60ppm)というもの。
2011年からはこの新しい透析システムを利用した5年間に及ぶ臨床研究を行った。

臨床研究では、国内7施設の慢性血液透析患者309人を対象に、非盲検オープンデザインで電解水透析群(161人)と通常の血液透析群(148人)に割り付けて、全死亡と心血管合併症(うっ血性心不全、虚血性心疾患、脳卒中、虚血による下肢切断)の発症を5年間追跡した。

平均で3.28年間の追跡期間中、透析自体の臨床的効果と安全性には両群間で違いはみられなかったが、電解水透析群では透析後の高血圧が改善し、降圧薬の服薬量も有意に減少した。

追跡期間中に心血管合併症は91件観察された(電解水透析群が41件、通常の血液透析群が50件)。
多変量コックス比例ハザードモデルで年齢や心血管疾患の既往歴など複数因子を調整した解析の結果、電解水透析は心血管合併症の発症に独立して有意な影響を及ぼす因子であり、通常の血液透析群と比べて心血管合併症リスクが41%低下することが分かった(ハザード比0.59、95%信頼区間0.38~0.92)。

以上の結果を踏まえて、研究グループは「電解水を用いた新しい透析システムは、従来課題とされてきた血液透析患者の高い死亡率や心血管合併症リスクを低減させる解決手段になる可能性がある」と期待を示している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2018年1月15日
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