腸内細菌叢ががん治療薬の効果を左右する?

従来の抗がん薬とは異なる機序で作用する免疫チェックポイント阻害薬の効果を腸内細菌叢が左右する可能性があることを示した2件の研究結果が「Science」11月2日オンライン版に掲載された。

同薬の一種であるニボルマブ(商品名オプジーボ)などの抗PD-1抗体薬による治療を受けた進行メラノーマや肺がんなどの患者の腸内細菌叢を調べたところ、治療の効果があった患者となかった患者で細菌の多様性や構成に違いが認められたという。

一つ目の研究を実施したのは米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター准教授のJennifer Wargo氏ら。
この研究では、抗PD-1抗体薬による治療を受けた進行メラノーマ患者112人から採取した糞便を分析して腸内細菌叢の多様性や構成について調べた。

その結果、治療の効果があった患者では、なかった患者と比べて腸内細菌叢の多様性に富んでいることが分かった。

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また、効果のあった患者の腸内細菌叢では特定の細菌(ルミノコッカス属とフィーカリバクテリウム属)の占める割合が特に高かったのに対し、効果がなかった患者ではバクテロイデス属の細菌の割合が高いことも明らかになった。

さらに、効果のあった患者の糞便をマウスに移植したところ、そのマウスも抗PD-1抗体薬に対して良好な反応を示したという。

一方、二つ目の研究はギュスターヴ・ルシーがん研究所(フランス)のLaurence Zitvogel氏らが実施したもので、対象は抗PD-1抗体薬による治療を受けた肺がんや腎がん、膀胱がんの患者249人だった。

このうち治療の前後に抗菌薬を使用していた69人は、抗菌薬を使用しなかった患者と比べて抗PD-1抗体薬の奏効率が低く、生存期間も短かった。

また、対象患者の腸内細菌叢を調べたところ、抗PD-1抗体薬の効果が認められた患者の69%でアッカーマンシア・ムシニフィラと呼ばれる細菌が検出されたのに対し、非奏効患者でこの細菌が検出された割合は34%だった。

腸内細菌叢はヒトの体内に生息する膨大な数の細菌で構成され、その多様性が乏しいとさまざまな疾患のリスクが上昇することが明らかになっている。

今回報告された2件の研究結果を踏まえ、Wargo氏は「腸内細菌叢を調整することでがんの治療効果を高められる可能性が見えてきた」とする一方で、「具体的にどのような腸内細菌叢が望ましいのかなど明らかにすべき点は多く、今回の研究結果のみに基づいて安易にがん患者にプロバイオティクスの摂取を勧めるようなことはあってはならない」と慎重な姿勢を示している。

米モフィットがんセンターのNikhil Khushalani氏も、腸内細菌叢とがん治療の効果との関係を検討した研究としては、まだ第一段階のものであることを強調した上で、「がん患者の糞便試料を用いて腸内細菌叢を調べることで、抗PD-1抗体薬による治療効果を予測し、がんの個別化医療につなげられる可能性がある」と期待を示している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年11月2日
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