難治性てんかんに食事療法が有効、2件の研究で明らかに

薬物治療が奏効しない難治性てんかんの小児患者に対し、ケトン食療法と呼ばれる食事療法を実施したところ、発作症状が軽減したとする2件の研究結果が米国てんかん学会(AES 2017、12月1~5日、米ワシントンD.C.)で発表された。

AESはプレスリリースで「小児てんかん患者の約5人に1人は薬で発作をコントロールできないのが現状。これらの研究結果はそうした薬剤抵抗性てんかんの患者に希望をもたらす研究結果だ」と紹介している。

ケトン食療法とは糖質を減らし、脂肪を増やす食事療法で、脳内でのエネルギーの使われ方を変化させ、てんかん発作を抑える効果があると考えられている。
標準的なケトン食療法では、食事中の脂肪に対する糖質およびたんぱく質の比率が3~4:1となるように厳密に管理することが求められる。
脂肪は主にクリーム、バター、ナッツや種子のオイルから摂取する。
ケトン食用の食品を除けば、一般的なクッキーやキャンディーなどの菓子類は食べられない。パンや米、イモ類、パスタなどの炭水化物も制限の対象となる。

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今回報告された一つ目の研究は、米デル・チルドレンズメディカルセンター・オブ・セントラルテキサスのDave Clarke氏らが生後8カ月~20歳の薬剤抵抗性てんかん患者210人を対象に実施したもの。
このうち150人が迷走神経刺激法(VNS)、44人が脳梁離断術と呼ばれる外科手術、98人がケトン食療法を受けた。その結果、50%以上の発作軽減がみられた患者の割合は、VNS群で52%、外科手術群で54%、ケトン食療法群で63%だった。

一方、二つ目の研究ではマクマスター大学(カナダ)のRajesh RamachandranNair氏らが生後5カ月~16歳の薬剤抵抗性てんかん患者40人を対象に比較的緩やかなケトン食療法について検討した。
従来のケトン食療法は短期入院により集中的に実施されるが、この研究では脂肪の割合を低め(脂肪に対する糖質およびたんぱく質の比率を0.67~1:1)に設定したケトン食療法を開始。
これによって発作がコントロールできるようになった場合には同じ比率のケトン食療法を継続し、効果がみられない場合には2~3週間ごとに脂肪の割合を徐々に高めた。

その結果、6カ月後に約半数の患者で50%以上の発作の低減が認められ、完全に発作がみられなくなった患者も6人(15%)いた。最終的なケトン食療法の脂肪に対する糖質およびたんぱく質の比率は平均で1.5~2:1だった。

AESのスポークスパーソンであるJames Wheless氏は「てんかん治療では薬物治療が主軸となるが、ケトン食療法も極めて効果の高い治療選択肢となりうる」とコメントしている。

ただし、全ての患者で食事療法の効果が得られるわけではない。同氏によると、6週間試せばその患者にケトン食療法が有効かどうかを見極めることができるという。

学会発表された知見は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年12月5日
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