サルコペニア予防に筋トレ+必須アミノ酸+茶カテキンを

 高齢者のサルコペニアの予防に筋力トレーニングが推奨されているが、必須アミノ酸と茶カテキンの摂取を追加すると、より大きなメリットを得られる可能性を示唆するデータが報告された。骨格筋量の増大に加えてバランス力も向上できる可能性が示唆されたという。徳島大学先端酵素学研究所の森博康氏らの研究によるもので、詳細は「Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition」6月号に掲載された。

 加齢や疾患などで筋肉量減少や筋力低下が生じる「サルコペニア」は、要介護状態につながりやすく、効果的な予防・改善策の模索が続けられている。これまでのところ、筋力トレーニングに一定の効果があることが示されているが、栄養介入の有効性を示すエビデンスは十分でない。

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 こうした中、体内で作ることができないために食事からの摂取が欠かせない必須アミノ酸、特に筋タンパク質の合成を促すロイシンの重要性を示す報告が増えている。また、緑茶の渋みの成分である茶カテキンは、ミトコンドリアの機能を高めて加齢による筋委縮を抑制することが動物実験で示されている。ただし、ヒトを対象とした研究は少なく、これらの摂取によって高齢者のサルコペニアを予防し得るかは明らかでない。森氏らは一般高齢者を対象とする研究により、筋力トレーニングに加えて必須アミノ酸や茶カテキンを摂取した場合の有効性を検討した。

 研究の対象は、兵庫県在住の高齢者から募集された、サルコペニアや糖尿病、慢性腎臓病でない84人。無作為に以下の3群に分け、非盲検下で24週間介入し、筋肉量や筋力、バランス力、生活の質(QOL)などの変化を検討した。

 筋力トレーニング群(Ex群)は、1回1時間の筋力トレーニング指導を週に2回実施した。他の2群にもこの筋力トレーニングを指導した上で、必須アミノ酸群(Ex+AA群)はロイシンが高配合された必須アミノ酸試験食を、トレーニング終了後30分以内に摂取してもらった。さらに残りの1群(Ex+AA+TC群)には、高濃度茶カテキン試験食も同時に摂取してもらった。

 ベースラインにおいて3群間で、年齢、男女比、BMI、ふくらはぎ周囲長、栄養状態(MNA-SFスコア)、1日の歩数に有意差はなかった。また、介入期間中は、筋肉量や筋力に影響を及ぼし得るタンパク質の摂取量が、全群とも1.2g/kg/日以上となるように管理栄養士による食事管理が行われた。ベースライン時および介入終了時の食事調査の結果、摂取エネルギー量およびタンパク質摂取量に、有意な群間差は認められなかった。

 24週間の介入によって、ベースライン時から以下の有意な変化が認められた。

 まず、筋力トレーニングのみを行ったEx群では、握力(P=0.007)、膝伸展力(P=0.017)、歩行速度(P=0.012)、および身体的QOL(P=0.016)が有意に向上していた。

 必須アミノ酸摂取を追加したEx+AA群ではEx群と同様、握力(P=0.019)、膝伸展力(P=0.020)、歩行速度(P=0.002)、身体的QOL(P=0.041)が有意に向上し、さらに四肢の筋肉量を表す筋骨格指数(SMI)も有意に向上していた(P=0.014)。

 茶カテキン摂取も追加したEx+AA+TC群では、Ex+AA群と同様、握力(P=0.038)、膝伸展力(P=0.013)、歩行速度(P=0.008)、身体的QOL(P=0.020)、SMI(P=0.004)が有意に向上し、さらにバランス力を表す片足立ち持続時間も有意に伸びていた(P=0.045)。しかし、介入後のSMI、握力、膝伸展力、歩行速度、バランス力、身体的QOLの変化率をEx群、Ex+AA群、Ex+AA+TC群で比較検討したが、3群間で有意な差を認めなかった。

 精神的QOLについては3群とも有意な変化が見られなかった。

 著者らは、「健常な高齢者を対象に筋力トレーニング後の必須アミノ酸や茶カテキン摂取による、サルコペニア予防における上乗せ効果を検証した。特に、茶カテキン摂取は、バランス力の向上に寄与できる可能性が示唆された。一方、筋力トレーニングのみではSMIの有意な上昇は見られなかった」と結論付けている。なお、国内で市販されている緑茶飲料の茶カテキン含有量は、1杯(120mL)当たり約80mgとのことだ。本研究で使用された高濃度茶カテキン試験食には、市販の緑茶飲料の6~7倍の茶カテキンが含有されている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年8月23日
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