塩分過多が直接的にEDリスクを高める可能性

塩分摂取量が多いと高血圧のリスクが上がることには強いエビデンスがあり、また、高血圧が勃起障害(ED)のリスク因子であることもよく知られている。しかし、塩分過多は高血圧を介した経路とは別に、直接的にEDを引き起こす可能性が報告された。名古屋市立大学大学院医学研究科臨床薬剤学分野の木村和哲氏、徳島大学大学院医歯薬学研究部泌尿器科学分野の岸本大輝氏らの共同研究によるもので、詳細は「The Journal of Sexual Medicine」7月17日オンライン版に掲載された。
塩分の多い食事は高血圧のリスクであるとともに、それ自体が心血管疾患や腎疾患のリスクを高めることが報告されている。木村氏らは、EDも塩分過多による直接的な影響を受ける可能性を、ラットを用いて検討した。

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6週齢の食塩感受性モデルラットを3群に分類。1群は通常食(塩化ナトリウム量0.3%)で飼育する対照群とし、別の1群は高食塩食(同8%)で飼育。さらにもう1群は高食塩負荷とともにアルドステロン拮抗薬(エプレレノン)75mg/kg/日を経口投与し、6週間の飼育後に、各群の血圧の変化や勃起機能などを比較検討した。アルドステロン拮抗薬は、食塩負荷などによって亢進する鉱質コルチコイド受容体の活性を抑制し、降圧や臓器保護効果をもたらす薬剤。
6週間後の収縮期血圧は、対照群の125.1±2.7mmHgに比し、高食塩群は225.8±3.1mmHgで有意に高かった(P<0.01)。高食塩+エプレレノン群は210.8±6.3mmHgで高食塩群と有意差がなかった(P>0.05)。なお、体重は全ての群で群間差がなく、同等に成長していた。
勃起機能は、海綿体内圧を平均動脈圧で除した値で評価した。結果は、対照群の0.62±0.03に比し高食塩群は0.30±0.02で、勃起機能の有意な低下が認められた(P<0.01)。一方、高食塩+エプレレノン群は0.49±0.07であり、高食塩群より有意に高く(P<0.05)、血圧は高食塩群と同等であるにもかかわらず、勃起機能の低下は抑制されていた。
勃起のメカニズムには、血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)が重要であり、NOの産生には一酸化窒素合成酵素(NOS)が関係している。しかし、そのNOSの働きは、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)という物質により阻害されてしまい、血管拡張作用が弱くなり勃起機能が低下することが知られている。そこで今回の研究では、ADMAのレベルにも検討を加えた。
その結果、ADMAレベルは対照群の234.1±13.1mg/mLに比し、高食塩群は360.4±19.8mg/mLで有意に高かった(P<0.01)。一方、高食塩+エプレレノン群は265.0±38.8mg/mLであり、高食塩群より有意に低く(P<0.05)、NOSの働きが保たれていることが示唆された。なお、NO合成の基質であるL-アルギニンのレベルは、3群間で有意差がなかった。
このほか、高食塩群では酸化ストレスマーカーや炎症マーカーが対照群に比し有意に上昇し、高食塩+エプレレノン群ではその上昇が抑制されることなどが分かった。
これらの結果から研究グループは、「塩分過多は血圧への影響とは別の経路からもEDを引き起こす可能性があり、アルドステロン拮抗薬がその経路を阻害すると考えられる」と結論づけている。なお、本研究の限界点として、食塩感受性ラットを対象としていることを挙げている。ただしこの点に関しては、加齢やメタボリックシンドロームによって食塩感受性亢進状態にある人が少なくない現状を指摘するとともに、たとえ食塩非感受性であっても高食塩によって内皮依存性血管拡張作用は低下するとの報告があることから、「食塩負荷は食塩感受性の有無にかかわらずEDのリスクになり得る」と述べている。

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