脂肪細胞のベージュ化を促す調節メカニズムを解明 M2マクロファージの除去が鍵か、富山大

基礎代謝を高めるために起こる脂肪細胞のベージュ化(褐色化)を調節するメカニズムの一端を明らかにしたと、富山大学大学院内科学講座1教授の戸邉一之氏らの研究グループが「Scientific Reports」10月1日オンライン版に発表した。寒冷時にはエネルギーを燃やすベージュ脂肪細胞が活性化されて基礎代謝が高まるが、特定のマクロファージを選択的に除去するとベージュ化がさらに活性化されて血糖値が改善することを、マウスを用いた実験で突き止めたという。

脂肪細胞にはエネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞とエネルギーを燃やして体温を保つ褐色脂肪細胞がある。白色脂肪細胞の中には、常温環境では白色脂肪細胞だが、寒冷時にはベージュ化して熱を産生する脂肪細胞群が散在しており、ベージュ脂肪細胞と呼ばれている。このベージュ脂肪細胞を活性化すると肥満や糖尿病になりにくくなることが指摘されている。

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戸邉氏らは、これまで脂肪細胞に存在するさまざまな脂肪組織内の免疫細胞の中でも、M2マクロファージと呼ばれるマクロファージに着目してきた。そこで今回、生体内のM2マクロファージのみを任意のタイミングで除去できる遺伝子改変マウスを作製し、脂肪細胞のベージュ化について解析した。

その結果、寒冷時には正常なマウスでも皮下脂肪のベージュ化が起こるが、M2マクロファージを除去したマウスではより強いベージュ化が起こっていることが分かった。それにより、M2マクロファージを除去したマウスでは基礎代謝が高まり、血糖値が低下するほか、インスリンの効きも改善することが明らかになった。さらに、このベージュ化は皮下脂肪にある前駆ベージュ脂肪細胞の数が増えることで引き起こされていることも明らかになったという。

これらの結果を踏まえ、戸邉氏らは「今回のマウスを用いた検討から、前駆ベージュ脂肪細胞の数の調節にM2マクロファージが関与している可能性が示唆された。M2マクロファージを除去したり減らしたりすると白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞に性質が転換し、基礎代謝がより高く、肥満や糖尿病になりにくい体質に改善できる可能性がある。今回の結果は、これらの予防法の開発につながると期待される」と結論づけている。さらに、M2マクロファージは肝臓や骨格筋などの臓器にも存在することから、脂肪組織以外におけるこのマクロファージの役割についても解明していきたいと展望している。

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HealthDay News 2018年10月15日
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