魚のエキスが糖尿病網膜症の治療薬に?

 魚のエキスが糖尿病網膜症の治療薬となる可能性が報告された。網膜の新生血管という異常な血管の発生が、魚エキスにより抑制されることが動物実験で認められたという。慶應義塾大学医学部眼科学教室、静岡県水産・海洋技術研究所、日本大学医学部視覚科学系眼科学分野の共同研究によるもので、「Nutrients」4月10日オンライン版に掲載された。

 糖尿病網膜症は、糖尿病の治療が不十分な状態が続くことで発症する網膜の病気で、国内の失明原因の上位に位置する。網膜に発生する病的な新生血管が病気の進行に大きく関わる。この新生血管に対し、血管の増殖を促す因子である「VEGF」の働きを抑制する治療薬が使われる。しかしこの治療薬は、眼球への繰り返し投与が必要で医療費が高くなり、副作用のリスクや効果が不十分なこともあるなどの課題が残されている。

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 魚油に多く含まれているエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3系多価不飽和脂肪酸には、血管保護作用があることが知られており、糖尿病網膜症のリスク低下も報告されている。ただし、魚のエキスの作用は知られていない。

 今回、研究グループはまず、82種類の海洋生物から抽出したエキスの作用を検討した。その結果、オアカムロ、キビナゴ、ムロアジ、カンパチなどの6種類の魚エキスには、VEGFの発現につながる「HIF」という低酸素誘導因子の作用を抑制する働きがあることが分かった。

 そこで、糖尿病網膜症モデルマウスにオアカムロのエキス3g/kgを5日間経口投与したところ、対照群に比べて網膜の新生血管の面積が有意に縮小するという結果が示された(P=0.015)。他方、新生血管発生の原因となる網膜の無血管野(血管が閉塞し血流が途絶えている部分)の面積には、有意差が認められなかった(P=0.6)。

 次に、ストレスを負荷しHIFを過剰発現する条件下で培養した網膜の細胞に、魚エキスを添加するという実験を行った。すると、魚エキスを添加した網膜細胞ではHIFの発現が低下するとともに、HIF作用の標的遺伝子であるvegfやepoの発現が低下することが明らかになった。

 これらの結果について研究グループは、「魚の積極的な摂取が糖尿病網膜症の進行を予防する可能性を示唆する新しい知見」とし、「この成果をさらに発展させることで、糖尿病網膜症患者にとっての新たな治療法となることが期待される」とまとめている。

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HealthDay News 2020年6月22日
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