フレイルと交通格差の関係が明らかに――東京都健康長寿医療センター

 国内の都市、郊外、農村に住む高齢者の移動手段を比較した研究結果が発表された。フレイルに該当する場合、どの地域に住んでいるかにかかわらず、移動手段が限定的になる傾向が見られたが、郊外や農村の居住者は都市部の居住者に比べて、他者が運転する車に同乗する人の割合が高いなどの相違が認められた。移動の機会や手段が限られることで、身体的フレイルに加え社会的フレイルが助長されることも懸念される。

 フレイルとは、加齢による心身機能の低下などにより身体的・心理的ストレスに対する耐性が脆弱化した状態で、要介護予備群に相当する。適度な運動を継続し、社会との接点を保つことが予防対策として重要とされ、それには高齢者が気軽に外出できる環境の整備が必要とされる。交通インフラは地域によって異なり、都市に比べて郊外や農村は高齢者の移動手段が限られている。しかし、その違いがフレイル該当者の移動にどの程度影響を及ぼすかについては、これまで十分明らかにされていなかった。

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 東京都健康長寿医療センター研究所の阿部巧氏らは、国内3地域で実施された高齢住民を対象とした調査の結果を比較し、この点に関する詳細な検討を行った。その結果が「International Journal of Environmental Research and Public Health」に9月1日、掲載された。

 解析には、東京都大田区(人口密度1万1,814人)を都市、埼玉県鳩山町(同541人)を郊外、群馬県草津町(同132人)を農村とし、それぞれの地域に居住する65歳以上で要介護認定を受けていない5,032人、2,853人、1,219人から得た調査結果を利用した。フレイルの判定は、東京都健康長寿医療センターが開発した「介護予防チェックリスト」に基づき、15点満点中4点以上をフレイルと定義した。移動手段は、歩行、自転車、自動車の運転、他者が運転する車への同乗、公共交通機関について、それぞれ週に1回以上利用するかどうかを評価した。

 対象者9,104人の平均年齢は73.5±5.7歳、女性が51.1%、独居者が15.2%で、1,714人(18.8%)がフレイルに該当した。年齢、性別、独居か否か、脳卒中または骨・関節疾患の既往で調整後、フレイルに該当するか否かで移動手段を比較すると、都市、郊外、農村のいずれにおいてもフレイル該当者は非該当者に比べて、車への同乗を除き全ての移動手段の利用が有意に少なかった。

 他者が運転する車の利用は、都市ではフレイル該当者と非該当者で有意差がなかったが〔非該当者に対するオッズ比(OR)1.08(95%信頼区間0.87~1.33)〕、郊外ではOR1.73(同1.32~2.25)、農村ではOR1.61(同1.10~2.35)と、フレイル該当者は有意に利用することが多いという、居住地域による相違が認められた。

 次に、フレイルの有無による交通手段の利用状況により生じる交互作用を、都市での差を基準として比較した結果から、自身で車を運転する割合の差が、農村では有意に大きいことが分かった。その一方、公共交通機関の利用に関するフレイルの有無による差は、都市に比較し農村では有意に小さいことが分かった。ただし後者の公共交通機関の利用割合は、農村においてはフレイルの有無にかかわらず20%未満と少なく、都市(フレイル該当者58.7%、非該当者74.9%)より大幅に低かった。なお、歩行や自転車については、有意な交互作用は見られなかった。

 これらの結果を著者らは、「フレイル該当者は非該当者に比べて移動の選択肢が限られており、その不利益は特に郊外や農村でより顕著であることが明らかになった」とまとめている。また、「フレイルに該当する高齢者のニーズを満たすための適切な移動手段を確保することが重要であり、都市と郊外・農村の交通格差を埋めるために、例えばライドシェアなどの代替手段を積極的に導入する必要がある」と結んでいる。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年10月12日
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