転倒予防には運動を推奨、ビタミンDサプリメントは否定


高齢者の転倒予防のための対策として運動を推奨する一方で、ビタミンDサプリメントの摂取は否定する見解を示した。
また、骨折予防のためにビタミンDやカルシウムのサプリメントを摂取することに関しても「十分なエビデンスがない」として推奨していない。
USPSTFは今回、65歳以上の健康な高齢者の転倒予防に関する勧告と、骨粗鬆症による骨折歴のない成人におけるサプリメントを用いた骨折予防に関する勧告のそれぞれについて草案を発表した。
いずれの勧告案も、これまでのエビデンスレビューに基づきまとめられた。
まず、高齢者の転倒予防に関する勧告案では「転倒リスクが高い高齢者に中等度のベネフィットがある」として運動を推奨。
具体的にどのような種類の運動をすべきかについては示していないが、勧告案の執筆者の一人で米バージニア・コモンウェルス大学准教授のAlexander Krist氏は「専門家の指導の下で行うバランス能力や歩行能力などを向上させる運動は役に立つだろう」と話す。

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また、勧告案では医師に対して「状況に応じて高齢者の転倒リスクをチェックし、個々に合わせた予防策を提示する」ことも推奨。
具体的には、運動や栄養、服薬管理に関する指導や社会的サービスや地域のサービスの利用などを挙げている。一方、ビタミンDサプリメントについては「転倒予防のみを目的とした摂取は推奨しない」との見解が示された。
さらに、成人の骨折予防を目的としたビタミンDやカルシウムのサプリメント使用に関する勧告案でも「閉経後の女性が低用量のサプリメント(ビタミンDが400IU以下、カルシウムが1,000mg以下)を使用することは推奨されない」とその使用を否定。
閉経前の女性や男性がこれらのサプリメントを使用することや、閉経後の女性が高用量のサプリメント(ビタミンDが400IU超、カルシウムが1,000mg超)を使用することについては「ベネフィットとリスクを評価するには十分なエビデンスがない」としている。
Krist氏は「高用量のビタミンDやカルシウムが骨折予防に有効かどうかは不明だが、低用量では骨折予防の効果はない」と説明。
今後、高用量サプリメントによる効果について研究を重ねる必要があるとしている。
なお、米ペン・ステート大学医学部教授のChris Sciamanna氏は、今回の勧告案で医師に高齢者の転倒リスクのチェックを求めていることについて「医療機関にとっては診察時間が増えるだけで収益にはつながらないため、医師によるリスク評価が普及するかどうかは疑わしい」と指摘。
片脚だけで10秒以上立っていられるかどうかを確認する転倒リスクのセルフチェックを高齢者自身が行うことを勧めている。

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