全レセプトデータから、日本の糖尿病診療の質が明らかに 地域や施設によるばらつきも

国内で行われたほぼ全ての保険診療データの解析から、糖尿病合併症の検査実施割合に改善の余地があることが明らかになった。国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センターの杉山雄大氏らの研究によるもので「Diabetes Research and Clinical Practice」7月20日オンライン版に掲載された。
同氏らは「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」を用いガイドラインが推奨している糖尿病合併症検査の実施状況を調査した。対象は2015年度に糖尿病薬を定期処方されていた外来患者約415万人。1型糖尿病患者が1.9%を占めた。年齢は40歳未満1.6%、40代5.8%、50代13.3%、60代29.6%、70代29.9%、80代17.6%、90歳以上2.7%、糖尿病薬としてインスリンが14.8%に処方されていた。糖尿病薬を処方していた医療機関の内訳は、診療所が63.5%、200床未満の病院が17.4%、200床以上の病院19.1%で、全体の11.0%が日本糖尿病学会(JDS)の認定教育施設であった。

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血糖コントロール指標となる検査(HbA1cまたはグリコアルブミン)は、96.7%の患者に年1回以上実施されていた。都道府県別に見ても95.1~98.5%の範囲に収まり地域差は少なかった。それに対して網膜症の検査が行われていた患者は46.5%で半数にとどかず、都道府県別では最小の37.5%から最大の51.0%まで地域差が見られた。またJDS教育施設の認定ありでは59.8%、認定なしでは44.8%だった。
腎症を調べる尿検査については、診療報酬算定条件の関係から200床以上の病院を除いて調査。その結果67.3%に年1回以上の尿定性検査がなされていた。都道府県別では54.1%~81.9%の範囲に広がり、北海道・東北地方で高く近畿地方で低いなど地域差がみられた。JDS認定ありでは92.8%、なしでは66.8%だった。
腎症を早期・正確に把握できる尿アルブミンまたは尿蛋白の定量検査の実施割合はより低く、全体の19.4%にとどまった。都道府県別では10.8%~31.6%で、尿定性検査と同様に地域差を認めた。JDS認定ありで54.8%、なしでは18.7%であり、尿定量検査はJDS認定を受けている医療機関でも実施割合が低いことがわかった。
本研究は診療報酬ベースの解析であり、各地域間における患者の重症度などが考慮されておらず、地域間の比較を行う際には注意が必要である。また尿アルブミン定量検査に関しては、頻回測定に対する診療報酬上の抑制が、年1度の測定の低下につながっている可能性があるかもしれない。しかし、これまで日本全体の糖尿病合併症検査の実施状況を明らかにした調査はなく本研究が初めてであり、本研究の結果を基に糖尿病診療のさらなる質の向上が期待される。研究グループでは、今後も定期的に糖尿病診療の質指標を測定し、診療の質向上や、適切な医療政策の立案に役立つ情報を提供していく予定であるという。
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