ピロリ除菌後も胃薬PPIで胃がんリスク上昇か


H. pyloriを除菌した6万人超のデータ解析で、PPIの使用で胃がんリスクが約2.4倍となることが示唆されたという。
この研究は香港大学教授のWai Keung Leung氏らが実施したもの。
Leung氏らは今回、2003~2012年に香港でH. pylori除菌のためクラリスロマイシンを含む抗菌薬とPPIの3剤併用療法を受けた成人6万3,397人(除菌時の年齢中央値54.7歳)のデータを解析した。
追跡期間は平均7.6年で、この間に3,271人がPPIを、2万1,729人がPPIとは作用機序の異なる胃薬であるH2受容体拮抗薬を使用していた。
追跡期間中に153人が胃がんを発症したが、全例がH. pylori陰性で慢性胃炎を伴っていた。
解析の結果、PPIの使用で胃がんリスクが2.44倍に上昇することが示された。一方、H2受容体拮抗薬の使用は同リスクに関連していなかった(ハザード比0.72)。
また、PPIの使用期間が長いほど同リスクが上昇し、1年以上で5.04倍、2年以上で6.65倍、3年以上で8.34倍になることが示された。

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この研究はPPIが胃がんを発症させるという因果関係を示すものではない。
また、PPIによる胃がんリスクは相対的には高いが絶対リスクとしては低い。
しかし、PPIは逆流性食道炎や胃炎などに対して最も多く使用されている薬剤であるため、Leung氏らは医師に対し「長期的な処方は慎重に行うべきだ。
このことはH. pyloriを除菌した患者も例外ではない」と注意を呼び掛けている。
一方、米スタテン・アイランド大学病院のSherif Andrawes氏は「胃がんリスクのわずかな増大を理由にPPIの使用を中止する必要はない」と指摘。
「PPIによる治療をしないことによる消化管の他の部位での出血やがん発症のリスクと比べれば、PPIの副作用によるリスクの方が小さく、PPIが必要不可欠な場合もある。
例えば、バレット食道の患者の食道がん予防には胃酸を抑制するPPIが有効だ」と説明している。
ただし、同氏らも胃酸の逆流がみられるだけの患者に対してはPPIを処方する前に生活習慣の是正や食事の改善を促す努力をしていると話している。

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