米国で2剤目の遺伝子治療薬、特定の血液がん治療で承認


8月には同じCAR-T療法の新薬であるKymriahが小児および若年者の急性リンパ性白血病の適応で承認されており、Yescartaは米国で2剤目の遺伝子治療薬となる。
Yescartaの適応は、2種類以上の治療を受けたが奏効しなかったか、治療後に再発した成人の大細胞型B細胞性リンパ腫〔びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、高悪性度のB細胞性リンパ腫など〕。
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は適応外とされている。
大細胞型B細胞性リンパ腫のうちDLBCLは成人の非ホジキンリンパ腫として最も頻度の高いタイプのもので、米国では年間7万2,000人が非ホジキンリンパ腫を新たに発症し、その約3分の1がDLBCLだという。

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Yescartaによる治療では、患者から白血球の一種であるT細胞を採取し、遺伝子操作によりリンパ腫細胞を標的として死滅させる新たな遺伝子を組み込み、この細胞を再び患者の体内に注入する。今回の承認の根拠とされているDLBCLを含む大細胞型B細胞性リンパ腫患者100人超を対象とした多施設共同臨床試験では、治療後の完全寛解率は51%に達していたという。
FDAのScott Gottlieb氏は「今回のYescartaの承認は、重篤な疾患の治療における全く新しいパラダイムの構築で節目となるものだ。わずか数十年の間に遺伝子治療は“有望な概念の1つ”から現実的な治療法へと進化した」とコメント。
一方、米ワシントン大学臨床腫瘍学のArmin Ghobadi氏も「がん治療における新たな時代が始まった。CAR-T療法があれば、患者自身の細胞を、がんを攻撃する強力な武器に作り替えることができる。これは極めて高度な個別化医療であり、さまざまな種類のがんに対する効果が期待できる」と話している。
ただし、Yescartaにもリスクはある。
FDAによれば、重篤な副作用として高熱やインフルエンザ様症状を引き起こすサイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性が生じる可能性があることが報告されているという。

なお、Gottlieb氏によると、FDAは近日中に細胞ベースの再生医療の開発支援計画に関する包括的な方針を発表する。
この方針ではCAR-T療法を含む遺伝子治療で使用する画期的製品への促進プログラムの適用についても明示されるという。
また、先ごろ開かれたFDA諮問委員会では主に小児の視力障害を引き起こすまれな眼科疾患に対しても遺伝子治療の承認を勧告することが全会一致で決まった。
この治療法はRPE65遺伝子の変異による視力障害をある程度回復させるものであり、極めて画期的なものだと専門家は話している。

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