遺伝子多型で2型糖尿病罹患の予測能が向上 多目的コホート研究から


詳細は「Diabetic Medicine」2月14日オンライン版に掲載された。
これまで海外や日本の研究で、糖尿病のなりやすさには特定の遺伝子座の一塩基多型(以下、糖尿病感受性遺伝子多型)が関係することが報告されており、GWASでは日本人の2型糖尿病と関係する数十個以上の糖尿病感受性遺伝子多型が同定されている。
しかし、これまでの研究の多くは糖尿病患者と糖尿病を有さない患者との比較によるもので、日本人の一般集団を対象とした検討は十分になされていなかった。
研究グループは今回、JPHC研究に参加した一般住民を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、糖尿病感受性遺伝子多型による2型糖尿病発症の予測能を検討する前向きの症例対照研究を実施した。
対象は、1990年および1993年に全国9地域に在住し、1995~1998年に実施した5年後調査から5年間の追跡期間中に新たに糖尿病に罹患した466人と罹患しなかった1,361人(罹患リスク検証セット)および5年後調査と2000~2003年に実施した10年後調査時点で糖尿病を有していた1,463人と糖尿病を有さなかった1,463人(有病リスク検証セット)の計4,753人。
これまでにGWASにより同定されている11個の糖尿病感受性遺伝子多型による糖尿病罹患の予測能を分析した。

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その結果、全ての対象者において、年齢や性、居住地域を調整した上で各糖尿病感受性遺伝子多型と糖尿病リスクとの関連について解析したところ、CDKAL1、CDKN2A/B、KCNQ1と呼ばれる遺伝子領域に糖尿病感受性遺伝子多型(それぞれrs2206734、rs2383208、rs2237892)を持つ場合は糖尿病リスクがそれぞれ1.28倍、1.21倍、1.27倍であることが分かった。
次に、罹患リスク検証セットにおいて、対象者を11個の糖尿病感受性遺伝子多型を保有する数で5群に分けて(Q1:3~9個、Q2:10個、Q3:11個、Q4:12個、Q5:13~17個)、年齢や性、BMIなど従来より糖尿病の罹患予測ができるとされている因子で調整して糖尿病リスクを比較したところ、糖尿病感受性遺伝子多型の数が最も少ない群と比べて最も多い群では糖尿病リスクが2.34倍であった。
さらに、従来のリスク因子(年齢や性、喫煙歴、BMI、糖尿病家族歴、降圧薬の服用)による糖尿病発症予測モデルに、11個の糖尿病感受性遺伝子多型から成る遺伝的リスクスコアを加えると、従来モデルと比べてわずかに糖尿病罹患の予測能が高まることも明らかになった。
以上の結果を踏まえて、研究グループは「日本人の一般集団において、従来の糖尿病リスク因子に遺伝子多型の情報を加えると糖尿病罹患の予測能が高まる可能性がある。
一方で、予測能の向上はわずかであったことから、糖尿病の予防を目的に遺伝子多型の情報を用いる臨床的な有用性は限られたものであるかもしれない」と結論づけている。
また、今後の研究課題としては、今回は検討できなかった血糖値の変動を考慮した糖尿病罹患予測モデルの開発や11個以外の遺伝子多型を追加したモデルによる予測能の検討が挙げられるとしている。

糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。