緑茶がフレイルを抑制する?――亀岡スタディ

緑茶の摂取頻度が高い人はフレイルリスクが低いという関連を示す報告が「Nutrients」に11月19日掲載された。京都府亀岡市で行われている「亀岡スタディ」のデータを、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の南里妃名子氏らが解析したもの。
フレイルとは、さまざまなストレスへの耐性が低下した「要介護予備群」の状態のこと。意図しない体重減少などが生じ、死亡リスクの上昇とも関連することが報告されている。これまでの研究で、抗酸化作用を持つ栄養素を含む食品の摂取量が多いほどフレイルリスクが低いことが示唆されている。緑茶にはカテキンなどの抗酸化作用物質が豊富に含まれており、フレイルリスクを抑制する可能性があるが、そのエビデンスは明らかではなかった。

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南里氏らが解析に用いた亀岡スタディは、介護予防の推進と検証を目的に、同市に居住する65歳以上の高齢者を対象として2011年にスタートした前向きコホート研究である。要支援・介護認定を受けている人やフレイル評価が欠落していた人を除外し、5,668人(男性48.8%)の登録時データを横断的に解析した。なお、フレイルは、厚生労働省の基本チェックリストで25点中7点以上の場合と定義。また、緑茶の摂取頻度は、アンケートの回答を基に、「ほとんど飲まない」、「1日1杯未満」、「1日1~2杯」、「1日3杯以上」に分類した。
まず、緑茶の摂取頻度と関連のある因子を検討すると、性別を問わず、緑茶摂取頻度が高い群は、より高齢で、エネルギー摂取量が多く、果物や野菜の摂取頻度も高く、現喫煙者は少なく、またコーヒーの摂取頻度が高い傾向が見られた。ただしBMIと飲酒習慣との関連は見られなかった。
フレイルの有病率は男性29.3%、女性30.6%だった。フレイルリスクに影響を与え得る因子(年齢、BMI、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒習慣、コーヒー摂取量など)を調整後、男女ともに緑茶摂取頻度が高いほどフレイル有病率が有意に低くなる傾向がみられた(傾向性P値が男性は0.02、女性は<0.01)。また、男性では「ほとんど飲まない」を基準としたとき、1日3杯以上飲む群でオッズ比(OR)の有意な低下が認められた〔OR0.71(95%信頼区間0.54~0.94)〕。さらに女性では、全ての群でオッズ比が有意に低かった。
これらの関連について、年齢(75歳未満/以上)で層別化して解析すると、男性では有意な交互作用が観察され、75歳以上でのみ関連が見られた(交互作用P=0.01)。一方、女性では年齢と緑茶摂取との間に有意な交互作用は認められず、年齢に関係なく緑茶摂取頻度とフレイルとの間に有意な負の関連が認められた(交互作用P=0.15)。
次に、基本チェックリストの下位尺度と緑茶摂取頻度との関連を検討すると、男性では、認知機能や口腔機能との負の関連が認められた(いずれも傾向性P=0.02)。女性では、認知機能や口腔機能だけでなく、手段的日常生活動作(IADL)も緑茶摂取頻度と負の関連が認められ(いずれも傾向性P<0.01)、さらに運動機能との有意な負の関連も認められた(傾向性P=0.01)。
これらの結果から著者らは、「緑茶の摂取頻度が高いほど、フレイル有病率が低くなる傾向があることが確認された」と結論付け、「縦断研究による因果関係の確認が求められる」と述べている。なお、全体的に男性よりも女性において、低い緑茶摂取頻度でもフレイル有病率が低下する傾向が認められたことに関して、「女性は閉経後、女性ホルモンの分泌低下とともに全身の慢性炎症傾向が強まり、体タンパクの異化が亢進することが報告されている。そのため、緑茶に多く含まれる栄養素の抗酸化作用がもつ生物学的利用能がより効率的に働くことで、フレイル発症に対して効果をもたらすのではないか」との考察を加えている。

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