新婚男性の勃起の硬さ不足は、精液の質の低下と関連

「陰茎は大きくなるが硬くない」「硬いが挿入に十分でない」といった、勃起の硬さや困難さを表す症状がある場合、精液の‘質’が低下している可能性があることが報告された。日本人の新婚男性を対象とした順天堂大学浦安病院泌尿器科の辻村晃氏らの研究によるもので、詳細は「Sexual Medicine」10月24日オンライン版に掲載された。多変量解析では、勃起の硬さの不足が精液の質の低下を予測する独立因子として示されたという。

 近年、日本を含む先進諸国では出生率の低下が問題となっている。出生率の低下の原因の1つとして男性不妊が考えられるが、新婚男性の精液の質に関する報告は少ない。そこで辻村氏らは、結婚直前・直後に不妊症スクリーニングのため同院やDクリニック東京などの関連施設に受診した男性564人を対象として、精液の質を調査し関連する因子を検討した。対象者の平均年齢は35.5歳、BMI22.7、喫煙者率15.2%で、精巣容積は約20mLだった。

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 精液検査の結果を世界保健機関(WHO)基準に基づいて判定すると、対象の11.0%が精液量1.5mL未満、9.2%が精子濃度1500万/mL未満、10.6%が精子総運動率40%未満であり、これら3つの異常所見のいずれか1つが該当する人は全体の25.4%を占めた。また無精子症も1.8%の頻度で見られた。

 精子に異常所見がある群はない群に比較し、年齢とBMIが有意に高く、精巣容積が有意に小さかった。その他、γ-GTP、空腹時血糖、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンに有意差があり、いずれも精子に異常所見がある群が高かった。なお、男性ホルモンのテストステロン値は有意差がなかった。

 また質問票を用いた評価の結果、勃起機能(SHIM)や勃起の硬さ(EHS)、男性更年期症状(AMS)に群間の有意差があり、異常所見のある群で低評価だった。前立腺症状(IPSS)は有意差がなかった。

 これらの有意差が見られた因子を用いて多変量解析を実施。その結果、年齢、黄体形成ホルモンと並び、EHSで評価した勃起の硬さが、精液の質低下の有意な説明変数として抽出された。EHSスコア4点(陰茎は完全に硬く、硬直している)を基準とすると、0~3点(順に「陰茎は大きくならない」「陰茎は大きくなるが、硬くはない」「陰茎は硬いが挿入に十分なほどではない」「陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない」)では、精液の質低下のオッズ比が1.844(P=0.009)だった。

 以上の結果から研究グループは「挙児を希望する男性においても4分の1の割合で精液所見の異常が見られ、勃起の硬さや困難さというED症状が精液の質低下に関連している」と結論づけている。また、「一般に加齢やテストステロン分泌の減少に伴い男性の生殖能力と勃起能力の双方が低下するが、本検討ではEHSスコアが独立した因子であったことは興味深い」として強調。その背景として、動脈硬化がEDのみならず精子形成不全のリスクだとする報告があることから、血管内皮機能低下と精子の質低下が並行し進行している可能性を考察し、「今後の研究課題としたい」と述べている。

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HealthDay News 2019年11月18日
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