HbA1c6.5%未満でPCI後の心血管死リスクが増大――順天堂大

糖尿病患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の生命予後とHbA1cの関連を検討した結果が「Cardiovascular Diabetology」2月18日オンライン版に掲載された。初回PCI後の心血管死リスクが最も低いのはHbA1c7.0~7.5%であり、HbA1c6.5%未満では有意なリスク増加が認められたという。順天堂大学大学院医学研究科循環器内科の船水岳大氏、岩田洋氏らが、同大学で行われているPCIレジストリ「J-PACT」のデータを解析し明らかになった。
厳格な血糖管理による細小血管症抑止のエビデンスは豊富だが、大血管症に対してはエビデンスが確立されておらず、むしろリスクを高める可能性が報告されている。ただし日本人を対象とする心血管イベント二次予防における血糖管理に関する報告は少ない。

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今回報告された研究の対象は、2000~2016年に順天堂医院で初回PCIを受けた糖尿病患者1,328人。PCI施行前のHbA1c値で5群に分け、6.2年間(中央値)追跡した。エンドポイントは心血管死(心臓突然死および、心筋梗塞、心不全、心原性ショック、脳血管イベント、大動脈疾患による死亡で定義)。
ベースライン時の主な患者背景は、年齢66.7±9.7歳、男性81.3%、BMI24.5±3.6、HbA1c7.5±1.3%。HbA1cで層別化した各群の患者数は、6.5%未満が267人、6.5~7.0%未満が268人、7.0~7.5%未満が262人、7.5~8.5%未満が287人、8.5%以上が244人。HbA1c低値群で高齢患者が多く、BMI、 LDL-C、TG、高感度CRP、および急性冠症候群の割合が低く、高血圧やCKDを有する割合は高かった。病変枝数、複雑病変、栄養状態(GNRI)は群間差がなかった。血糖降下薬については、HbA1c高値群でSU薬やインスリンの処方頻度が高く、HbA1c低値群ではDPP-4阻害薬の処方頻度が高かった。
追跡期間中に81件の心血管死が発生した。その発生率をHbA1c別に比較すると、HbA1c7.0~7.5%群が最も低く1,000人年当たり7.0で、これに対しHbA1c6.5%未満群は同14.6で最も高かった。ただしχ二乗検定による有意差は認められなかった。
一方、カプランマイヤー法により累積心血管死亡率を検討すると、HbA1c7.0~7.5%群の累積死亡率は7.6%、HbA1c6.5%未満群は13.0%であり、ログランク検定により有意差が認められた(P=0.042)。
続いて、HbA1c7.0~7.5%群の心血管死リスクを基準とし、多変量解析(年齢、性別、病変枝数、収縮期血圧、LDL-C、HDL-C、血糖値、糖尿病罹病期間で調整)により検討。すると、HbA1c6.5%未満ではハザード比(HR)2.97、6.5~7.0%でHR1.77、7.5~8.5%で同1.62、8.5%以上では同1.93となり、HbA1cが低くても高くてもリスクが上昇するというU字型の関係が見られた。特にHbA1c6.5%未満群のリスク上昇は有意だった(P=0.007)。この結果は調整因子に左室駆出率、eGFR、ヘモグロビン、β遮断薬の使用などを加えても変わらず、HbA1c6.5%未満でのリスク上昇は引き続き有意だった(P=0.015)。
著者らは本研究の限界点として、単一施設での検討であること、PCI施行後の血糖管理状態が不明なこと、心血管死リスク低下が近年報告されたSGLT2阻害薬など新薬の処方率が低いことなどを挙げつつ、「糖尿病患者の心血管イベント二次予防ではコントロール不良症例だけでなく、あまりに厳格な血糖管理によって心血管死リスクが上昇する可能性が示唆される」と結論をまとめている。

糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。