空気清浄機で大気汚染による心臓へのダメージを低減できる可能性


この研究は、復旦大学(中国)のHaidong Kan氏らが健康な大学生55人を対象に実施したもの。学生が住んでいる学生寮の部屋に本物または偽物の空気清浄機を設置し、室内と屋外の微小粒子状物質(PM2.5)濃度を測定した。
その結果、本物の空気清浄機を使用すると、偽物の空気清浄機を使用した場合と比べて室内でのPM2.5への平均曝露量は82%減少した。1日当たりのPM2.5への平均曝露量は、本物の空気清浄機を使用した場合で24.3μg/㎥、偽物の空気清浄機を使用した場合で53.1μg/㎥だった。
さらに、本物または偽物の空気清浄機を設置してから9日後、学生に血液検査と尿検査を実施したところ、PM2.5への曝露量が増大するほどコルチゾールなどのストレスホルモン値が上昇していることが分かった。また、血糖やアミノ酸、脂肪酸、脂質の値も、使用した空気清浄機が本物か偽物かで差が生じていた他、PM2.5への曝露量が多かった学生では血圧値の上昇やインスリン抵抗性、酸化ストレスおよび炎症のマーカーの上昇が認められたという。
このことから、Kan氏らは「PM2.5への曝露量の増加に伴うこうした代謝物やバイオマーカーの変化は、大気汚染が心血管に有害な作用をもたらしている一因である可能性がある」と指摘している。

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米国心臓協会(AHA)のプレスリリースで、同氏らは、空気清浄機の使用によって(1)短期的なストレスホルモン値の低下が認められた(2)1日当たりのPM2.5への曝露量が世界保健機関(WHO)の定める基準範囲内に低下した―ことが今回の研究から得られた主な知見だと紹介。その上で「空気清浄機が健康に有益であることが明らかになったが、実際の生活環境下でも有効なのかどうかについては現時点でははっきりとしていない。また、中国は欧米に比べると大気汚染のレベルが高いため、今回の結果が他の国にも当てはまるのかどうかは不明」として、空気清浄機の長期的な効果や、大気汚染のレベルが低い地域に住む人への効果についてさらなる研究が必要だと述べている。

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