ED治療薬が心疾患のステント治療に有望

男性の勃起不全(ED)に対する効果で知られるシルデナフィル(商品名:バイアグラ)が、虚血性心疾患に対するステント治療でも有望であることを示すラットを用いた研究結果が米国心臓協会(AHA)Basic Cardiovascular Sciences学術集会(BCVS 2017、7月10~13日、ポートランド)で報告された。
血管内に「ステント」と呼ばれる小さな金属製の筒状の医療機器を留置して血管を広げるステント治療は、心筋梗塞や狭心症に対する治療の1つとして広く実施されている。しかし、「ベアメタルステント(BMS)」と呼ばれる従来型の金属がむき出しのステントを使用すると、血管の内膜が増殖して肥厚し、再び血管が狭窄してしまう場合がある。
一方、こうした問題を克服するために開発された、ステントに薬剤を塗布した「薬剤溶出ステント(DES)」は、再狭窄リスクは低減できるものの、ステントの周囲に血栓ができるリスクがあることが分かっている。
今回、ソウル大学病院(韓国)のHan-Mo Yang氏らは、実験室での検討で、シルデナフィルが血小板凝集を30%抑制することを確認。また、同薬をラットに使用すると、動脈壁の肥厚を防ぐ酵素であるプロテインキナーゼG(PKG)の活性が増強されることを明らかにした。
ステントの留置により血管が損傷するとPKGの活性が低下し、血管壁の肥厚や血小板凝集が促進される。今回、シルデナフィルがPKGの活性を増強することが示されたことを受け、Yang氏らは「ステントを留置した患者にも同様の効果が期待できる」との見方を示し、「ラットを用いた研究であるため、今後ヒトを対象とした大規模研究で検証する必要はあるが、シルデナフィルはDESに塗布する薬剤として、またステント留置後に経口投与する薬剤として適している可能性がある」と述べている。

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さらに同氏らは「シルデナフィルは既に別の目的で広く使用されている薬剤であるため、今後、同薬がステント治療後の再狭窄に有効であることが確認されれば、すぐにも利用可能になるのではないか」としている。
米ノースショア大学病院の心血管インターベンション治療医であるAvneet Singh氏も、「ステント治療にシルデナフィルを用いるというアプローチは有望」と評価。「血栓や瘢痕化による再狭窄リスクは、依然としてステント治療の弱点である」とした上で、「シルデナフィルの使用がステント治療をさらに安全かつ有効なものにする新境地を開く可能性がある」と期待を寄せている。
一方、米レノックス・ヒル病院のCarl Reimers氏は、この研究は心臓に近い冠動脈ではなく、心臓から脳へつながるラットの頸動脈を用いて行われた点を指摘。「現時点での臨床的意義があるかどうかを判断するには不十分な研究である」との見解を示している。
なお、一般的に学会で発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。