地中海食による心疾患予防、効果あるのは高収入か高学歴の人のみ?

果物や野菜、魚、オリーブ油、ナッツ、全粒穀物などが豊富な地中海食には、心疾患を予防する効果があると考えられているが、その恩恵を受けられるのは高収入か高学歴の人に限られる可能性が、新たな研究で示された。この研究結果は「International Journal of Epidemiology」8月1日オンライン版に掲載された。
この研究は、イタリアの臨床研究施設であるI.R.C.C.S. ニューロメド研究所のGiovanni de Gaetano氏らのグループが実施したもの。同国の前向きコホート研究「Moli-sani研究」に登録された35歳以上の男女約1万9,000人を中央値で4.3年間、追跡した。追跡期間中に252件の心血管イベントが発生したが、日常的な食事内容がどの程度地中海食に当てはまっているかを「地中海食スコア」で評価したところ、同スコアが2ポイント上昇するごとに心血管疾患リスクが15%低下することが分かったという。

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しかし、このような地中海食による心血管疾患リスクの低下は高収入の人や高学歴の人でのみ認められ、低収入の人や低学歴の人では認められなかった。地中海食によって同リスクは高収入の人で61%、高学歴の人では57%低下することが示された。
高収入の人には定期的な運動や健康診断の受診、禁煙といった健康的な習慣がある人が多いが、今回の研究ではこうした習慣や婚姻状況、BMIといった因子を考慮しても同じ結果が得られたという。
そこで研究グループは、地中海食による心血管疾患リスクへの影響が収入や学歴によって異なる原因についてさらに調べたところ、たとえ地中海食スコアが同程度であっても高収入の人では低収入の人と比べて肉の摂取量が少なく、魚や全粒穀物の摂取量が多いことが分かった。また、高収入の人は低収入の人よりも多くの種類の抗酸化物質などが豊富に含まれる果物や野菜を摂取し、また収入や学歴が高い人ほど食品中の栄養素を維持することができる方法で野菜を調理する傾向にあることも明らかになった。
魚やオリーブオイルといった地中海食でも特に栄養学的に価値の高い食品の多くは安価ではない。米ボストン大学のJoan Salge Blake氏は「健康的な食品の入手のしやすさや価格は、明確にその人の食事内容や生活習慣の質に影響する」と認めた上で、家計に負担なく地中海食を取り入れる方法として、安売りしている農産物を購入したり、旬の食材を選んだりすること、調理では加熱し過ぎないよう心掛けることなどを勧めている。

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