善玉コレステロールと血圧はU字型の関係――特定健診データの解析

 善玉コレステロール(HDL-C)と血圧はU字型の関係にあるというデータが報告された。この関係の背景として、HDL-Cが低くて血圧が高い場合はメタボリックシンドロームの影響、HDL-Cが高くて血圧が高い場合は飲酒習慣の影響が考えられるという。神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科の中島啓氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Medicine」に10月30日掲載された。

 高比重リポタンパク(HDL)は心血管保護作用を有し、一般的にはHDL-Cが高い方が良いとされる。しかしHDL-Cが極端に高い場合(例えば100mg/dl以上)にも、心血管イベントリスクが高いことがある。またHDL-CとBMIや中性脂肪(TG)が逆相関することはよく知られているが、HDL-Cと血圧との関連は十分に検討されていない。そこで中島氏らは、特定健診のビックデータを用いてこの点の詳細な解析を行った。

高血圧に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

 解析対象は、2014年度の神奈川県内の特定健診受診者181万9,173人から、データ欠落のある人を除いた149万3,152人(男性55.6%)。HDL-C値に基づいて全体を9つの群に分け(最小値カテゴリーは39mg/dL以下、最大値カテゴリーは110mg/dL以上で、その間は10mg/dLごとに群分け)、その他の検査指標との関連を検討した。

 まず全体的な傾向を見ると、年齢以外の全ての連続変数(血圧、BMI、TG、LDL-C、およびHbA1c)はHDL-Cの低い群で高く、また高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物療法中の患者の割合や、心血管疾患既往者や現喫煙者の割合もHDL-C低値群で高い傾向にあった。反対に身体活動習慣のある人と毎日飲酒する人の割合は、HDL-Cの高い群で高かった。

 HDL-Cと血圧との関連を詳細に検討すると、収縮期/拡張期血圧ともにHDL-C90~99mg/dLの群を底値とする左右が逆のJ字型の関係が認められた。高血圧(140/90mmHg以上または降圧薬の服用で定義)の有病率との関連を性別に検討すると、男性はHDL-C70~79mg/dL群を底値(高血圧有病率33.8%)、女性は90~99mg/dLの群を底値(同20.6%)とするU字型の関係が認められた。特に男性は女性に比べて、HDL-C最高値群(110mg/dl以上)での高血圧有病率(40.8%)の上昇が顕著だった。

 この関係は、年齢、現喫煙、糖尿病・脂質異常症の薬物療法、身体活動習慣、飲酒量で調整すると、HDL-C高値群での有病率がやや低下したが、男性では逆J字型の関係が維持されていた。女性ではHDL-C高値群での高血圧有病率の上昇は見られなくなった。さらに調整因子にBMIとTGを追加すると、HDL-C低値群での高血圧有病率は大きく低下して、男性、女性ともに正の線形の関係となった。この線形の関係は、調整因子にLDL-CとHbA1cを追加しても維持されていた。

 次に、飲酒習慣との関連を見ると、習慣的飲酒〔オッズ比(OR)1.72(95%信頼区間1.71~1.74)〕だけでなく、機会飲酒〔OR1.59(同1.57~1.61)〕でも高血圧有病率の上昇が認められた。続いて、非飲酒群でHDL-Cと高血圧有病率の関係を検討すると、前記の全体解析の結果に比べて、HDL-C高値群で有病率が高いという関係性が減弱した。

 これらの結果から著者らは、「HDL-Cが低い場合と高い場合の双方が高血圧リスクに関連している。この関係は複雑で、飲酒者と非飲酒者では異なるようだ」とまとめている。また考察として、「臨床で遭遇することの多いHDL-C30~70mg/dL程度の範囲内でのHDL-Cと血圧の逆相関は、メタボリックシンドロームの影響によるものであり、HDL-Cがこれ以上高い場合に見られる高血圧は、飲酒の影響によるものではないか」と述べ、この機序の確認のためのさらなる研究の必要性を指摘している。

肥満症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年12月20日
Copyright c 2021 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
記載記事の無断転用は禁じます。