HDL-C値の低下と心筋梗塞、脳卒中との関係は? 多目的コホート研究から


ただし、女性ではHDL-C値の上昇や低下による脳卒中全体のリスクへの影響はみられなかったほか、HDL-C値が高いほど脳出血リスクは高まることも示されており、研究グループはさらなる検討の必要性を指摘している。
詳細は「Atherosclerosis」10月号に掲載された。
これまでの研究で、善玉コレステロールとして知られるHDL-C値が低下するほど心筋梗塞などの虚血性心疾患リスクは高まることが報告されている。
しかし、日本人では女性を対象とした研究が少なく、HDL-C値と脳卒中の関連については国内外で一致した見解が得られていなかった。
そこで研究グループは今回、JPHC研究に参加した一般住民を前向きに15年間追跡したデータを元に、HDL-C値と虚血性心疾患および脳卒中の発症との関連を調べた。

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対象は、1993年および1995年に虚血性心疾患や脳卒中の既往がない40~69歳の住民3万736人。
HDL-C値を男女別に五分位に分けて、喫煙や飲酒などリスク因子を調整した後、HDL-C値が最も高い群を基準として虚血性心疾患と脳卒中の発症リスクを比較した。
その結果、虚血性心疾患の発症リスクは、男性ではHDL-C値が最も高い群と比べて最も低い群で1.85倍に有意に増加した(P=0.02)。
女性でも同程度のリスク増加が認められたが、有意ではなく増加傾向にとどまっていた(P=0.07)。
また、脳卒中の発症リスクについては、男性ではHDL-C最高値群と比べて最低値群で1.29倍に有意に高まっていたのに対し(P=0.03)、女性ではHDL-C値との関連はみられなかった。
さらに、CT検査画像に基づいて脳卒中をサブタイプ(くも膜下出血、脳出血、ラクナ梗塞および皮質枝系脳梗塞、脳塞栓)で分けてHDL-C値との関連を調べたところ、このうちラクナ梗塞の発症リスクは、HDL-C最高値群と比べて最低値群では男性が1.63倍、女性が1.97倍に増加していた。
しかし、女性ではHDL-C値が高いほど脳出血の発症リスクが有意に高まることも明らかにされた。

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ラクナ梗塞は、脳の奥深くにある直径0.2~0.3mm程度の細い血管が詰まる小梗塞で、日本人が発症する脳梗塞で最も頻度が高いとされる。
研究グループによると、これまでラクナ梗塞の原因となる細い血管の血栓形成にはHDL-C値は関与しないものと考えられてきた。
しかし今回の研究ではHDL-C値が低いほどラクナ梗塞の発症リスクが増加するとの結果が得られており、HDL-Cには太い動脈だけでなく細い動脈でも血栓形成の予防に働く可能性が示唆されたとしている。
また、女性ではHDL-C値が低いと脳出血リスクが低下したことについては、研究グループはHDL-Cによる血小板機能の影響が考えられると考察している。
しかし、HDL-Cと循環器疾患の発症との関係は十分には解明されておらず、今後のさらなる研究が必要だと付け加えている。

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